NYインディーホラー映画界の鬼才を直撃!現代版「フランケンシュタイン」を描いた新作を語る
ニューヨークのインディーズ系ホラー映画界を代表するラリー・フェセンデン監督が、新作『ディプレイヴド(原題)/ Depraved』について、3月21日(現地時間)、ニューヨークのB Bar & Grillで行われた単独インタビューで語った。
【作品写真】フランケンシュタインを生んだ作家の半生を描いた映画『メアリーの総て』
本作は、英作家メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」を現代の解釈で描いたもの。ウェブ・デザイナーのアレックス(オーウェン・キャンベル)は、ある夜、通り魔にナイフで数回刺され記憶を失うも、突如目を覚ます。そして、自身の体が傷跡だらけになっていることに気づくと、目の前にはヘンリー(デヴィッド・コール)と名乗る外科医が立っていた。映画『地球が凍りつく日』、『ABC・オブ・デス 2』などのフェセンデン監督がメガホンを取った。
フェセンデン監督は、今作を現代版の「フランケンシュタイン」として手掛けた経緯を「目覚めたら体中に縫った跡が残された状態というモンスターの視点で描いた映画を作りたかった」と語る。「(人の体をつなぎ合わせるという)医者の動機について考えたとき、戦地で体にダメージ(損傷死)を受けた人たちを見てきたことで、そんな人たちをいかによみがえらせるかを考えている退役軍人の医者が思い浮かんだんだ。そして、その医者の背後に隠れて、お金を動機として動くキャラクターを考えついた。最終的には、それぞれのボディー・パーツで作られた男を中心に描いたドラマだよ。古典的なホラーを取り上げ、その古典作品から重要な何かを新たに解釈したり、(古典的な)決まり文句を織り交ぜながら、心が痛むようなストーリーを描きたかったんだ」
また、現代版「フランケンシュタイン」として描く上で、彼の人生全体を描きたかったというフェセンデン監督。「目を覚ましたときは何事も新しく、まるで子供のようにゆっくりしゃべったり、どこかぎこちないけれど、次第に体が発達していき、言語も話せるようになる。俳優には、この時期は青年期で、この時期は女の子にも興味を示しているとか、この時期は脳が活動し始めているとか、慎重に、計画的に演じさせていたよ。メイクも裸の体は傷跡だらけだったが、徐々に傷が癒えていく。そして最後に医者の元に戻ってきたときは全く異なった状態になっているんだ」こういった“段階”を描くことは、映画『ドラキュラ』の影響を受けたそうだ。
モンスターを作り出す過程において、テクノロジーの進化を通して、倫理的な問題を提起していることについては「1818年にメアリー・シェリーが執筆した『フランケンシュタイン』の原作では、(怪物を創るという)道徳性や、どの程度テクノロジーを推進させるかを定義していたんだ。あの出版から200年たった今でも、それは重要な問題提起だと思ったね。全てのテクノロジーは、一見、われわれ人間を前進させているように見えるけれど、われわれは精神的にそのテクノロジーについていけているのか、それが問題なんだ」と自身の考えを示した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)