敗者を描いたスポーツドキュメンタリー、出演アスリートらが語る
Netflixの注目のドキュメンタリーシリーズ「ルーザーズ:失敗が教えてくれること」について、元WBO世界ヘビー級王者のマイケル・ベント、製作総指揮・監督のミッキー・ドゥーゼイ、ストリートバスケットプレーヤーのジャック・ライアンが、4月19日(現地時間)、AOL開催のイベントで語った。
【作品写真】ニューヨークのストリートバスケットを描いたドキュメンタリー
本作は、現代社会において、敗北や失敗をどのように受け止めればよいのかを問いかけながら、敗北の苦しみを乗り越え、新たな道を切り開いたアスリートたちの心理に焦点を当てたドキュメンタリー作品。
これまでいくつかのスポーツのドキュメンタリーを手掛けてきたドゥーゼイ監督は「われわれの社会は、勝利者中心の文化になっているし、これまで多くのスポーツドキュメンタリーが手掛けられてきたものの、諦めない弱者やハリウッド映画のようなエンディングにならない作品を、誰も描いたことがなかったと思うんだ。よく弱者になった方が、勝者になることよりも学ぶことが多いというけれど、それが反映されている作品が少ない。だから、そういった人(敗者)たちを描く良い機会だと思ったんだよ」と製作経緯を明かした。
元WBO世界ヘビー級王者のマイケルは、父親から強制的にボクシングをさせられた過去を明かしているが、その理由について「僕のボクシング・キャリアは1995年に終わり、それから(スポーツ誌で)記事を書くようになり、さらに俳優もするようになった。記事を書いていたときに、自分の中で繰り返し唱えていた言葉があって、それは『スパイク・リー監督が映画の脚本を書くように、信念を持って書け』だったんだ。それを目標に記事を書いていたよ。ボクサーとして人々の前で、パンチを受けることができるのであれば、人々の前で真実(過去に父親から虐待されていたこと)を尋ねられても大丈夫だと思ったんだ」と語った。もっとも、マイケルは自分が望んでいなかったボクサーという職業に就いたものの、ボクシングを通して学んだことには感謝しているそうだ。
子供たちのためにバスケットを教えているジャックは、これまでの人生でプロになろうと思ったことはなく、学生時代からクラスのお調子者だった自分には、この職が適していたと話す。「子供たちとバスケをしているほうが楽しいからね。事実、僕の家族や友人は、仮に僕がNBAの選手になっていたとしても、NBAから追い出されていただろうって言うんだ。もし僕が(NBA選手となって)名誉と金を手に入れていたら、もっとクレイジーになって、決して家にも帰らなかっただろうし、きっと夜2時間も寝なかっただろうね。若い頃の僕は、権威や権力を受け入れることができなかったんだ。けれど、ハーレム・ウィザーズ(バスケットボールを使ってパフォーマンスを行うチーム)に加わってからは、安らぎを見いだすことができたんだよ」(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)