ネタバレあり!『コンフィデンスマンJP』古沢良太が明かす伏線の数々
5月17日の公開から多くの観客を動員し、ヒット街道をばく進中の映画『コンフィデンスマンJP』。巧みに張られた伏線がラストに向かって回収されていくストーリーは見事で、「もう一度」というファンが劇場に多数足を運んでいるという。そんな本作について、脚本家の古沢良太が「さらにもう一度」観たくなる、物語に隠した仕掛けについて語った。(以下、本作のネタバレをふくみます)
【写真】長澤まさみに三浦春馬がバックハグ!映画『コンフィデンスマンJP』より
ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)といった素性が明かされていない信用詐欺師たちがチームを組み、欲望にまみれた“オサカナ”と呼ぶ獲物たちから大金を騙し取る姿を描いた痛快作品。一筋縄ではいかない怒涛の展開は、116分という時間をまったく感じさせないほど魅力に満ちあふれている。
これまで数々の人気作を世に送り出してきた古沢は「『コンフィデンスマンJP』はテーマが重要。どんな業界のどんな人間をどんな方法で騙すか、はたまた騙せないのか……。そこが明確でないとストーリーに破綻が生じてしまうので、他の作品よりも深く掘り下げる必要がありました」と本作ならではの苦労を語る。
劇場版の“オサカナ”は、竹内結子演じる香港マフィアの女帝ラン・リウ。そしてダー子たちの仲間に、織田梨沙ふんするモナコという見習い詐欺師が加わる。映画を観た人間なら、この二人がストーリー上、非常に大きな役割を担っているキャラクターだということがわかるだろう。いわゆる“ネタバレ厳禁”案件だ。しかし、じっくりと作品を観ると、あらゆるところにラン・リウとモナコの立場が浮かび上がってくる伏線が散りばめられているという。
「例えば、前田敦子さんが演じた鈴木さんという役。電話で泣いているシーンがあったと思いますが、あれは完全なる前フリですよね。それ以外、まったく意味のないシーンなので。あとはモナコの出演シーン。正直『ここにモナコいなくてもいいよね』というシーンがたくさんある。それはモナコがいろいろなことを知る必要があるから。おのずとモナコがどんな立ち位置の子なのかわかると思います。さらにラン・リウも、最初わざと顔がわからない設定にしているところなんかも、いかにもですよね。そういう部分を繋ぎ合わせると、モナコやラン・リウがどちら側の人間かというのがわかると思います」。
もう一つ、劇場版のエンドロール後、ダー子たちがアイドルユニットを結成している意味深なシーンが映し出される。これは、映画の公開日翌日に放送されたスペシャルドラマ「コンフィデンスマンJP 運勢編」でも登場するが「連続ドラマをやっているとき、長澤さんのスタッフの方から『アイドル詐欺ってやってないですよね』と言われて、面白いなと思ったんです。ただあまりにも脈絡なく映画の最後に入れてしまったのが心残りだったので、そこに繋げようと思ったんです」と裏話を披露した。
劇場版の脚本を執筆する際「リアリティーをどのぐらいに設定するのかは考えました」と語った古沢。続けて「“ルパン三世”的な世界観に飛ばすと、お客さんがついてきてくれるか不安になるじゃないですか。でも日常の鬱屈(うっくつ)したものを吹き飛ばすような映画にもしたかった」と胸の内を明かす。
以前は「書いてしまったらそこで終わり。ヒットしようがしまいが自分には関係ない」とある意味で無責任にならないと脚本なんて書けないと開き直っていたという古沢。しかし「だんだん放り投げられなくなってきました」と苦笑いを浮かべる。確かに、「古沢良太脚本」というフレーズをフックにしたプロモーションが行われることも多い。本人は「大きなプレッシャーですよ」と笑うが「それは背負わないといけないですからね」と覚悟を持って臨んでいるという。
それだけに『コンフィデンスマンJP』が大きなヒットに繋がっていることは「感慨深い」という。「素晴らしいキャストの方に演じていただけたというのがすごく大きいですが、結構頑張って書いた作品だったので、こうして映画にまで繋がって、徐々に熱気の輪みたいなものが広がっていったのは嬉しいですね。頑張れば報われるとは思わないけれど、ちょっとは報われたかなと思わせてくれる作品でした」と古沢のキャリアのなかでも、特別な作品になったことを明かしてくれた。(取材・文・撮影:磯部正和)