大人と子供が半々、芦田愛菜14歳のリアル
海を舞台に生命の神秘を描いたアニメーション映画『海獣の子供』で主人公の琉花の声を担当した芦田愛菜が、自身と同じ14歳のキャラクターに向き合い、いましかできない役柄、いましか過ごせない14歳への思いを明かした。
現在、ヒロインの琉花と同じ14歳の芦田は、これまで『怪盗グルー』シリーズや『マジック・ツリーハウス』など数々の劇場用アニメで吹替を経験してきた。昨年、『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』でラルゴを演じた際は「自分よりも年齢が下の役柄に最初はどんな声を出していいか戸惑うこともありました」と話していた。だが、今回は自分と同じ年齢の役。ラルゴは彼女自身の声より高めだったが、本作の琉花ではそのままストレートに素直に自分の声を発した。
「本当にそのままです。声のトーンなど意識することなく、感じたままに演じさせていただきました。等身大の14歳の琉花が感じていることなどは同じ14歳として、私も同じように感じていることもあるので演じやすかったです」と琉花がこれまでとは違い、自身に近い特別な役どころであったと明かす。
自分の気持ちを言葉にするのが苦手な琉花は部活で問題を起こし、母親にも打ち明けられず、居場所を失ってしまう。そんな琉花に対し、「琉花は心の中ではいろんなことを感じたり、思っていたりするけど、それをうまく言葉にして、伝えられないんです」と自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさに共感したという。「自分の気持ちを正確に伝えることは難しいです。特に悔しいとかつらいとか、自分にとってネガティブなことは言いづらいです。私も自分に素直になれない時は、琉花みたいにもやもやした気分になります」と素直な思いを明かした。
そんな芦田にとって、いま一番楽しいのが友だちと過ごす時間。「友だちと他愛もない話をしているだけで、こんなにも楽しいんだと知ったこの一年は思い出がたくさんできました。当たり前なんですけど、14歳は一度きり。その時々でいろいろ感じたりしたことが、振り返ってみたときに自分を形作っているのかもしれません」と子供ならではの感性と大人の冷静さでいまの自分の年齢を分析した。「早く大人になりたいという気持ちもありますけど、自立できるかといったら、まだそこまでの覚悟がありません(笑)。いまの時間が楽しすぎて、ずっとこのまま中学生のままでいいと思うこともありますけど、ちょっと背伸びしちゃう時もあります」と大人でも子供でもない時間を享受しているよう。
『海獣の子供』は芦田の一度きりしかない14歳の役づくりに触れられる貴重な作品。何十年か後、いつか彼女の歴史を振り返る時がきたならば、最も重要な作品の一つとして、数えられるに違いない。(取材・文:高山亜紀)
映画『海獣の子供』は6月7日より全国公開