こんな狙いが!コナン『紺青の拳』監督が明かす
人気シリーズの裏側を明かす公開講座「監督・プロデューサーが語る 映画『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』ができるまで」が7日、デジタルハリウッド大学の駿河台キャンパスで行われ、永岡智佳監督と、諏訪道彦プロデューサーが登壇、製作の経緯やその裏にある狙いを明かした(以下、本作のストーリーについて触れています)。
シリーズ最高興行収入となる最終興収91億8,000万円(配給発表)を記録した前作『名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)』と同様に、ハイペースの興行を続けている本作。現在は興収88億円を突破しており、シリーズ最高興収まであと一歩となった。諏訪プロデューサーも、「コナンの場合は、報告される数字を喜んで迎えることとなるけど、他の映画だとそうはいかない。数字が出るたびにもう少しどうにかならないかと思うんです」と笑顔を見せた。
今作では、怪盗キッドの策略により、無理やりシンガポールに連れてこられた江戸川コナン。永岡監督によると、コナンたちの滞在は3泊4日だったとのことで、「映画を観ている人も、コナンくんたちと旅をしている感覚になってもらえるといいなと思って。どうしたらいいかなと思った時に、時刻の変化が画面を通してわかるようになるといいなと思っていた」とのこと。
そこで時間の経緯が規則正しく進んでいるように見せるため、劇中では昼夕夜を順番に繰り返していくという。映画は昼間のレオン・ローたちの会話からはじまり、シンガポールのマーライオンの赤い血が出るところが夕方。そして日本にチェンジして夜になる。そこからオープニングを挟んで、シンガポール1日目。コナンがシンガポールにやってきたところが昼間となり、レオン邸に行くところで夕方になる……といった具合で物語は進む。
その中でも、特に夕方の描写にはこだわったそう。特報映像でも話題となった、夕陽を背景にした怪盗キッドのシーンは、画面としてのカッコ良さを目指したカットだったという。「これはバンパイアのイメージで作らせてもらいました。キッドが太陽に触れると、最終的にサラサラ流れて崩れ落ちるというイメージで特報は作りました。太陽の位置も含めて、映り込み画面なども、ものすごく綿密に計算した上で作ったんです」と永岡監督。「ただこれは特報限定で作った画面で、このカットはもともとシナリオにはなかった。でも(このカットが話題になって)入れないとまずいかもと思って。急きょこの映像を入れることになったんですけど、夕方が印象的なシーンになりましたね」と明かした。
さらに「今回、怪盗キッドはいつになく頑張るんですよ」と続けた永岡監督は、「頑張るんだけど、ミスをしてはめられるところは夕方を印象的に使いたいなと思っておりました。そして病院で傷の手当てをするシーンがあり、そこには月が出てきます。キッドはバンパイアと一緒で、月の光を浴びて傷を治して、また元気に飛び去っていくようなイメージで作りました。太陽が不吉な方向にいくなら、月は回復の方向にいく、というようなイメージがありましたね」と説明した。
今回は、怪盗キッドの正体である黒羽快斗として、素の表情も描いていたという永岡監督は、「自分でもそうだろうなと思ってやっていたんですが、それが確信になったのが、(声優の)山口勝平さんでした。2か所でヒヒッと笑っているところがあったんです」と振り返る。『名探偵コナン』の劇中ではクールな印象のある怪盗キッドだけに、最初にその笑いを聞いた時は少し違和感を感じたという永岡監督だが、相談したプロデューサーから今回は黒羽快斗が登場するコミック「まじっく快斗」の要素があるから大丈夫と聞き、納得。永岡監督は「結果、カッコいい怪盗キッドになりましたね」と満足げな顔を見せていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』は全国公開中