『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』日本最速レビュー MCUフェーズ3の最終作にふさわしい作品に
『アベンジャーズ/エンドゲーム』はヒーローたちのいる世界だけでなく、マーベルを愛する観客たちにも大きなインパクトを与えるラストを迎えた。同作から直接的につながっている『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、ピーター・パーカー、そして世界がどうやって再び立ち上がるのかをスパイダーマンらしさ全開のユーモアやアクションとともに描いており、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)フェーズ3の最終作にふさわしい作品に仕上がっている。(以下、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレをふくみます)
【動画】スパイダーマンは日本に行くべき!トムホ&監督インタビュー
本作の予告編では「どこに行っても彼を想い出す」という言葉とともに、自らを見出してくれたかけがいのない人物であるトニー・スターク(アイアンマン)の死を受け入れられず、悲しみにくれるピーター(トム・ホランド)の姿が映し出されていた。その言葉はピーターだけでなく、彼の死を悼む多くのファンの気持ちも表現していたのかもしれない。
これまでの『スパイダーマン』シリーズと同様に、MCUシリーズに属するトムホ版の『スパイダーマン』も現代の若者の姿を映し出してきた。嫌なことから目を背け、夏休み気分でいつもの街・ニューヨークからピーターが気軽に飛び出したことで、街の中の「親愛なる隣人」から世界を股にかける「真のヒーロー」に自然と変わっていく展開は秀逸だ。「スパイダーマンであることの責任」に向き合い、葛藤するピーターには誰もが共感し、スパイダーマンへの愛が深まるストーリーになっている。
「悲しみにくれていた少年の成長期」と説明されると、どこか暗いトーンの映画を予感してしまうかもしれないが、そこはトム・ホランドが持ち前の明るさを発揮し、『スパイダーマン:ホームカミング』に続いてメガホンを取ったジョン・ワッツの手腕が光っている。新キャラクター・ミステリオの魅力も満載で、スパイダーマンがベネチア、ベルリン、ロンドンなどで活躍するさまは爽快感にあふれている。
そして何よりファンを喜ばせるのは『エンドゲーム』を軸にしたMCUからの流れと、新展開へのリンクだろう。ファンが疑問に思っていた部分を回収しながら、マーベルファンにグッとくるシーンも多数詰め込んだあっという間の映画体験になる。フェーズ3、そして“インフィニティ・サーガ”最後の作品として、スパイダーマンが主人公の本作をチョイスしたマーベルスタジオの社長ケヴィン・ファイギは見事としか言いようがない。もちろん、今作でもエンドロール後の最後の最後まで、席を立つことは禁物だ。(編集部・海江田宗)