菅田将暉、俳優は「夢がある」仕事
2009年に「仮面ライダーW(ダブル)」で俳優デビューを果たすと、さまざまな役柄に挑み“変幻自在”という言葉がピッタリ当てはまる活躍を見せている俳優・菅田将暉。最新作『アルキメデスの大戦』(公開中)では、100人に1人の天才数学者・櫂直を奥行きたっぷりに演じ、舘ひろしらベテラン俳優から「天才」と絶賛されるほどの存在感を見せている。そんな菅田が、大先輩に囲まれた撮影現場でしみじみと感じたことがあったという。
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菅田演じる櫂は、東京帝国大学数学科を中退しアメリカに留学予定だったところを、海軍少将の山本五十六(舘)に誘われ、巨大戦艦建造計画阻止のために海軍入りする人物。柄本佑ふんする海軍少尉・田中正二郎と行動を共にするものの、挑む相手は海軍の海千山千の長老たちだ。
物語のクライマックスは、巨大戦艦建造計画の是非を問う密室の会議。そこで菅田演じる櫂は、味方である山本、海軍中将の永野修身(國村隼)、敵方である造船中将・平山忠道(田中泯)、海軍少将・嶋田繁太郎(橋爪功)、海軍大臣・大角岑生(小林克也)らと攻防を繰り広げる。
過去にも大ベテラン俳優たちとの共演はあったというが「基本的には一対一で、ここまで大先輩方に囲まれた経験はなかった」と語った菅田。しかも本作では主役として、最終的にはすべてを受け止めて、思いを叩きつける役柄だ。しかし菅田は「櫂というキャラクター性もあると思いますが、カメラの前では(先輩・後輩は)関係ないという気持ちがあるので、思い切り楽しめました」とまったく萎縮することなく撮影に臨めたという。
撮影現場で脱帽したのは舘ら共演者の「判断力、理解力」だという。「引き出しや経験が信じられないぐらい豊富な方たちなので、それぞれが圧倒的な存在感なんです。それでも状況に応じて瞬時に出し引きをする。たまらないですよね」と楽しそうに振り返る。さらに「大ベテランの方たちがたくさんいる現場。(笑福亭)鶴瓶さんは鶴瓶さん、國村さんは國村さん、橋爪さんは橋爪さん、克也さんは克也さんの人生が声や動き、芝居に感じられたんです」と、それぞれの生き方や進んできた道が色濃く出ている芝居に深みを感じたという。
そんな大先輩の演技はもちろん、もう一つ菅田にとって大きな衝撃だったのが「楽しそう」に見えたこと。「正直、楽な現場ではなかったと思うんですよ」としみじみ語ると「でも楽屋を含め、みなさん本当に楽しそうにしていました。後輩としては、そんな先輩方の姿を見られたのはすごく嬉しかった。やっぱり俳優業って面白いんだなと思ったし、夢があるなと感じたんです」と目を輝かせる。
菅田自身もインタビュー中、何度も「楽しかった」という言葉を繰り返した。「僕もこれまで大変なこともありましたが、俳優業は全部楽しめています」と断言した菅田。同時に「(後輩に見せる背中は)そうあるべきですよね」とも語った菅田の姿には、今後の日本映画界を背負っていく気概のようなものが感じられた。(取材・文:磯部正和)