2019年前半の成功作・失敗作
2019年も半分以上が過ぎた。“夏は5月から”というハリウッドのカレンダーでは、1年で一番の稼ぎ時となるサマーシーズンもすでに後半戦だ。ということで、現段階での北米通知簿を見てみることにしよう。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)
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まずは優等生組から。トップは言うまでもなく『アベンジャーズ/エンドゲーム』だ。『アバター』(2009)を追い抜くという目的のために、新たな映像を追加して7月に再度、劇場公開をしたこともあり、今作は史上最高の世界興行収入を打ち立てることになった。もちろん、これはインフレ調整なしの数字で、シリーズものでもある。3Dブームを巻き起こすなどあらゆる意味で世界を席巻した『アバター』に本当の意味で勝ったかどうかは、判断が分かれるところだ。
2019年公開作の北米ランキングの2位から6位は、『キャプテン・マーベル』『トイ・ストーリー4』『ライオン・キング』『アラジン』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の順(7月29日時点)。『スパイダーマン』以外は全てディズニー傘下の作品で、ソニー作品の『スパイダーマン』もマーベルとのコラボ。ディズニー帝国のパワーを、あらためて実感させられる。それ以外では、『ジョン・ウィック:パラベラム』が大ヒットした。シリーズ3作目にあたる今作は、ますますパワーアップしたアクションが受けて、北米で1作目の3倍、2作目の5割増し以上の成績を達成している。(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル110円計算)
サプライズヒットもあった。ケヴィン・ハートとブライアン・クランストンが主演した『人生の動かし方』が、まさにそうだ。日本でも大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』のリメイクで、3,700万ドル(約41億円)の予算に対し、北米だけで1億ドル(約110億円)を売り上げている。ワインスタイン・カンパニーの経営破綻に巻き込まれ、公開が大幅に遅れるなど大変な目に遭ったが、苦労の甲斐はあったようだ。また、現在はインディーズ映画『ザ・フェアウェル(原題) / The Farewell』がスマッシュヒットしている。オークワフィーナ演じる主人公が、余命短い祖母に会うため中国を訪れるという話で、監督もキャストもアジア系。昨年の『クレイジー・リッチ!』で始まったアジアンパワーは、うれしいことに衰えていない。
一方で、劣等生もいる。最初に挙げるべきは、『X-MEN:ダーク・フェニックス』だろう。長く続いてきたシリーズの、いわばフィナーレの作品だったのに、批評・観客の評価とも悪く、北米興収はたった6,500万ドル(約71億円)とシリーズでダントツ最下位の興行成績だった。新キャストでリブートを図った『メン・イン・ブラック:インターナショナル』や、ジェームズ・キャメロンが長年映像化を願ってきた『アリータ:バトル・エンジェル』もがっかりの結果に終わっている。『アリータ』は、あと10年早ければもっと新鮮に見えたのかもしれないだけに、余計に残念だ。
また、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』も予測を大きく下回り、キングコングとゴジラを対決させる次回作の公開が若干延期されるのではと言われている。赤字ではなかったものの、『ペット2』も北米興収は1作目の半分だった。
そんなことから、人はシリーズ作品に飽きているのではとの声も出ているが、『エンドゲーム』『ジョン・ウィック』『トイ・ストーリー4』の成功を考えると、それは必ずしも納得のいく説明ではない。結局は、観客が実際に観て面白いと感じ、口コミをしたいと思える映画だったかどうかが決め手なのである。この秋には、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』『マレフィセント2』『ランボー:ラスト・ブラッド(原題) / Rambo: Last Blood』『ターミネーター:ニュー・フェイト』『アナと雪の女王2』などまだまだシリーズ物が控えるが、それらを観客はどう判断するのだろうか。2学期の頑張りに、期待を寄せたい。