女性監督の参加率アップのため保育サービスを導入!サンセバスチャン映画祭
スペインのバスク地方で開催される第67回サンセバスチャン国際映画祭で、映画祭参加者のための保育サービスを導入する。昨今の映画業界では根強く残る性差別問題に取り組んでおり、各映画祭でも女性監督の参加比率を上げる努力をしている。そのための環境づくりの第1歩として行うもので、同映画祭ディレクターのホセ=ルイス・レボルディノスは「今回の試みがわたしたちの業界のワークライフバランスに貢献し、社会全体に刺激を与えることができれば」と語っている。
保育サービスは、映画祭コミュニティー、監督、視聴覚メディアの女性監督協会CIMAと会場となるサンテルモ美術館の協働で行われるもの。サービスの名前はスペイン語で、「赤い風船」を意味する「エル・グロボ・ロホ」。少年が赤い風船を追ってパリの街を冒険する、アルベール・ラモリス監督の同名傑作ファンタジーから名付けられた。
同名の保育サービスは今年のカンヌ国際映画祭がメジャー映画祭として初めて導入しており、今回はその姉妹版。会期中、映画祭のマーケット会場であるサンテルモ美術館内に100平方メートルのスペースが設けられ、午前10時~午後6時まで営業。映画祭のパス登録者の6か月~6歳までの児童が対象で、専門の介護会社がサービスを請け負う。英語・スペイン語・バスク語対応というのが、国際映画祭ならではだ。
料金もリーズナブル。会期中を通しての利用で子ども1人に対して50ユーロ(約6,250円・1ユーロ125円計算)で、16時間の利用で30ユーロ(約3,750円)。また施設内には授乳スペースや、家族の待ち合わせスペースも用意されるという。
映画祭参加のために長期で自宅を空けることになる映画関係者にとって育児の問題は常に課題だ。その昔、河瀬直美監督は、カンヌやサンセバスチャンといった国際映画祭に幼い息子を連れて参加し、遊び盛りの息子の面倒を見ながら取材に応じることもあった。
今年行われた第11回沖縄国際映画祭にMCで参加した女優の小沢まゆは、幼い子どもの子守のために自費で母親を帯同させたという。今回の映画祭の取り組みについて小沢は「保育サービスができれば、わたしたちも気兼ねなく国際映画祭に参加できるようになる。これはうれしいニュースです」と語っている。
メジャー映画祭が始めたこの取り組みが国際基準となるのか。今後の広がりを期待したい。(取材・文:中山治美)
第67回サンセバスチャン国際映画祭は9月20日~28日まで開催