阿部サダヲ&中村勘九郎、主人公2人体制の大河 駆け抜けた1年
大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合・日曜20時~ほか)で、第1部の主人公・金栗四三(かなくり・しそう)と、第2部の主人公・田畑政治(たばた・まさじ)をそれぞれ演じた中村勘九郎、阿部サダヲが、1年にわたる撮影を終えた心境を語った。
日本人初のオリンピック選手としてストックホルム大会(1912年)に出場し、「箱根駅伝」を創始するなど「日本のマラソンの父」と呼ばれた金栗(中村)と、ロザンゼルス(1932年)、ベルリン(1936年)両大会で、日本水泳陣を大躍進に導き、戦後、初のオリンピックを東京に招致した田畑(阿部)。2人がリレー形式で主人公を務める本作は、東京オリンピック開催(1964年)に至るまでの激動の近現代史を描く。
中村は撮影を終えた感想を「1年半近く同じ人物を演じるのは、なかなか得られない経験でした。前半と後半で主人公が変わるところは大きな群像劇」だと思った、と語り「特に(田畑が主人公の)第2部で、久しぶりにスタジオに行くと、まだ発表されていない出演者たちが歩いていたりして、以前から出演陣は豪華でしたが、後半もさまざまなジャンルの人が集まって、まるで和製アベンジャーズだな」と感じたという。
一方、阿部は「(劇中で)僕がクルッとまわってストップウォッチを押すポーズを、小学生たちが真似してくれていて、『まーちゃん(田畑の愛称)がんばれ』ってお手紙もいただくので、小学生のハートはつかんだのかなって思います」と意外な反響にうれしそうな表情。「なかなかお会いできない方とお芝居できたことや、もうご一緒できない方もいらっしゃって、ショーケンさんとお芝居できたことは、自分の中にずっと残るものですね」と、本作に高橋是清役で出演し、今年3月に亡くなった俳優・歌手の萩原健一さんとの共演シーンに思いを馳せた。
劇中、金栗と阿部が対面するシーンも見られたが、阿部は「アスリートの金栗さんが第2部になると変わっていって、(競技)引退後、いいおじいさんになってからは可愛くて面白いんです。優しそうな顔をしながら(オリンピックへのこだわりから)ネチネチしたところもある。最終回には、2人だけのいいシーンがあるんですよね」と中村の方を見る。これに中村も「田畑さんとのシーンはいつも濃かった」と振り返り、「パリ大会の報告会で初対面して、田畑が嘉納治五郎先生(役所広司)に背負い投げで倒されるシーンだったり、立場は違えどオリンピックへの純粋な気持ちは同じなので共演も楽しかった」と続ける。「(第40回からの)最終章の台本を読んで、いつも、今の時代に田畑さんがいてくれたらなって。ストレートすぎるセリフがグサグサ突き刺さりながら、これだって思っていました」と田畑の歯に衣着せぬキャラに魅了されたようだ。
1年を振り返って、阿部は「撮影に入る前は宮藤(官九郎)さんの脚本によって、日曜日の夜8時に笑いが起きるものと思っていたんですが、違っていました」と打ち明ける。「こんなに泣けるシーンがいっぱいあるとは思わなかったし、宮藤さんがアスリートを描いて、泣けるシーンを書くというのも驚きました。宮藤さんにいい裏切りをもらった」と予想を超える展開を楽しんだとのこと。中村も、宮藤脚本について「悲劇的なシーンでも、ずっと泣いていたら心が疲れてしまうところを、ふっと和らげてくれる笑いがある」と述べ、「感情をいろんな方向に揺さぶられながらも、宮藤さんって優しいなって思いました」と宮藤の脚本の妙を改めて讃えていた。
「いだてん」は、27日放送の第40回から最終章がスタート。第40回では、1959年に大詰めを迎えた東京オリンピック招致活動で、田畑が、IOC(国際オリンピック委員会)総会での最終スピーチをNHK解説委員の平沢和重(星野源)に依頼。渋る平沢に、終戦からの「オリンピック噺(ばなし)」を語って聞かせる。
中村は最終章について「今までもすごいエンジンを積んでいると思っていましたが、ここから最終回の第47回までは、ニトロを積んでアクセル全開で突っ走っていく感じで、僕も仕上がりが楽しみです」と期待感を口にしていた。(取材・文/岸田智)