アニメ業界を目指す学生と企業をつなぐ “虎の穴”!?
東京藝術大学や多摩美術大学など全国25校で制作された作品を一堂に集めた学生アニメーションの祭典インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル2019(以下、ICAF)が9月26日~29日、東京・乃木坂の国立新美術館で開催される。作品の上映はもちろん、学生なら誰でも作品を持ち込んでプロから講評を受けられたり、学生と企業をつなぐ交流会が設けられるなどアニメ業界を目指す人たちを育成する“虎の穴”となっている。
今や市場産業が2兆円を超えたアニメ業界(日本動画協会のアニメ産業レポートより)。その底辺を支える大学や専門学校での教育機関も増え、2002年に11校が参加してスタートしたICAFも、17回を迎えた今年は25校が参加。さらにデンマーク国立映画学校やイスラエルのベツァルエル美術デザイン学院などとも提携して作品上映するだけでなく、海外展開も行うという。
プログラムのメインは「各校選抜作品」。これは指導教員が自校の作品のうち1作品を推薦して上映とトークを行うもので、観客賞の対象となっている。大学対抗戦の趣もあり、過去には映画『ペンギン・ハイウェイ』(2018)のコンセプトデザインを手がけた久野遥子(多摩美術大学出身)や短編『マイリトルゴード』(2018)が国内外の映画祭で高い評価を受けた見里朝希(東京藝術大学大学院出身)が受賞している。
ほか、共催団体の日本アニメーション協会と日本アニメーション学会や、プロとして活躍している卒業生といった人脈を生かした多彩なプログラムが用意されている。その一つが、プロレス漫画「タイガーマスク」のプロレスラー養成機関にあやかって名付けられた「ICAFとらのあな」。学生・生徒なら誰でも持ち込みOKの上映&講評会で、今年は短編デジタルアニメシリーズ「PiNMeN」の池田爆発郎や映画『猫の恩返し』(2002)の森田宏幸監督らが講評を担当する。
またICAF卒業生の活躍を紹介する「ICAFとらのみち」のゲストには、アヌシー国際アニメーション映画祭の常連のアニメーション作家・水江未来(多摩美術大学出身)、滋賀県の「石田三成CM」を手がけた映像作家・藤井亮(武蔵野美術大学出身)やメタルダンスユニットBABYMETALのアートディレクションを行っている田中紫紋(武蔵野美術大学出身)らが登壇。さらには学生と企業を繋げる交流の場「ICAFとらのゆめ」もある。
アニメーション業界にとっては今年、京都アニメーションの惨劇があり多くの優秀なアニメーターが犠牲になった。同じ業界に携わっているICAFメンバーの心中穏やかではないが、多摩美術大学グラフィックデザイン学科の教授で、フェスティバルディレクターの野村辰寿は次のようなコメントを寄せている。
「この惨劇に対して自分たち、あるいはICAFとしてできることが何かあるだろうか、と考えました。その答えは早々見つかるわけではありませんが、教育を基盤としたこのICAFにできることは、これまで同様、今後も豊かな文化や産業を創出していける人材の育成なのかもしれません。観客の皆様にはここに集められた作品群を観ることで、学生アニメーションの最新クオリティー、さらにはその先に展開するアニメーションの未来をも感じていただけたらと思います」(取材・文:中山治美)
インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル2019は9月26日~29日、東京・乃木坂の国立新美術館で開催(入場無料)。その後、国内外で巡回開催予定。