三宅弘城、大河に見る“大人計画組”の力
大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~」(総合・日曜20時~ほか)で、金栗四三(かなくり・しそう/中村勘九郎)の盟友となる足袋屋店主・黒坂辛作(くろさか・しんさく)を演じる俳優の三宅弘城が、降板したピエール瀧に代わって途中参加することになった難しさや、脚本を担当する宮藤官九郎、第二部主演の阿部サダヲに対する特別な思いについて語った。
日本人初のオリンピック選手・金栗と、日本にオリンピックを招致した男、田畑政治(たばた・まさじ/阿部)の2人を主人公に、明治から昭和の激動の近現代史を描く本作。三宅演じる辛作は、東京・大塚のハリマヤ製作所の店主で、頑固な足袋職人。金栗が偶然、彼の足袋を履いて長距離走で優勝したことがきっかけで、「マラソン足袋」の開発に金栗と二人三脚で取り組むことになる。
まず、辛作役のオファーがきた時の率直な感想について「みなさんご存知のように、突然この話が来て、短い期間でたくさんのシーンを撮影しなければならなかったので、やはり大変でした」と振り返る。しかし「自分にはMっ気があるのか、きつい仕事にやりがいを感じるし、役者として監督の要望に『できない』とは言いたくないんです」と、演じる辛作と同様の頑固な役者魂をのぞかせる。
「無理な注文でも『どうやろうか』と考え出すのは、自分も職人でありたいと思うから。13年間、東京の下町に住んで、べらんめえ調のおじさんたちに囲まれて育ったのも、辛作に共感できる理由」とぶっきらぼうだが憎めない辛作に、三宅自身、惚れ込んでいる様子だ。
辛作は、金栗と開発した「マラソン足袋」が人気を博し、予期せぬ成功を収めるが、三宅にも同様の体験があった。「実は、役者をやりたいと思ったことは一度もなく、学生時代はずっと音楽をやりたいと思っていたんです。今いるナイロン100℃の前身の、劇団健康の舞台を観て衝撃を受けまして。ド素人の自分がすぐオーディションを受けて、そこから芝居にのめり込んでいった。そう考えると、全然意図してないところに今いるなあという現在なんですよ」と感慨深げ。
三宅にとって、役者仲間であり、パンクコントバンド、グループ魂で共に活動する脚本の宮藤官九郎、阿部サダヲ(田畑役)の存在は大きいようで、阿部について「この子、こんなにすごい子だったっけ? 田畑役に、もうピッタリでしたね」と話した後、「阿部くんは、宮藤作品のポイントをわかっていて、宮藤さんも阿部くんのことをわかっているから、セリフを書きやすい。で、それをマーちゃん(阿部)がさらに超えてくる。2人のすごいバトルになってますね」と讃える。
さらに、宮藤脚本についても「今回は、宮藤さんの心の熱い部分が出ていて、毎回泣ける。そこにちょこちょこっとオモシロも入れてきて、言葉に力がある。セリフがスッと体に入って来やすいし、気持ちでしゃべれるセリフなんです。宮藤さんが気持ちで書いているのがわかるし、宮藤さんの気持ちが見える。言葉が熱いです」と圧倒されているようだ。
また「宮藤さんが、大河の脚本を書くとは知らなかったので、リオ(のオリンピック)に行ったと聞いて、不思議に思っていたんです(本作取材のため)。本作の情報が解禁されたとき、皆川(猿時)くんが、宮藤さんに『よろしくお願いします(役をくださいの意)』と言っていた。僕も、勝地涼(美川秀信役)くんを介して『三宅さんが出ないのはおかしい』と(宮藤さんに聞こえるように)言ってもらいました」と笑いを交えて語っていた。(取材・文:岸田智)