ジョーカー役ホアキン・フェニックス、オファーを受けているのにオーディションを志願していた
映画『ジョーカー』で主演を務めたホアキン・フェニックスが、この映画でジョーカーを演じてほしいと依頼されたのにもかかわらず、「オーディションをしてほしい」と自ら志願していたことが明らかになった。
本作は、社会から軽視されてきた貧しい大道芸人のアーサーが、予測不能の凶行で人々を戦慄させて世界の全てを狂わそうとする“悪のカリスマ”ジョーカーへと変貌していくさまを描いた衝撃のドラマ。DCコミックからは離れて「ジョーカーのような人間はどのようにして生まれるのか」をリアルに描き、第76回ベネチア国際映画祭では最高賞となる金獅子賞を受賞している。
ホアキンはトッド・フィリップス監督との3度目の話し合いを振り返り、「『僕にジョーカーの笑いができるか、あなたに確認してほしい』と言ったんだ。つまり、僕はオーディションをしてほしいと言ったわけだよ」と打ち明ける。フィリップス監督は「気まずくて……(笑)。『もうこの役に決まっているんだよ。そんなことしなくていいよ』と言ったんだ」とホアキンの申し出には戸惑ったと苦笑しながらも、「こうして彼が試行錯誤して生み出した笑いは、苦悩による笑い、群衆に溶け込もうとする笑い、純粋な喜びによる笑い……と映画の中でいくつも披露されているよ」とその成果に自信を見せた。
ホアキンは「失敗したらどうしようという恐れもあったし、このキャラクターをどう理解して良いのかもわからなかった。だが結果としてジョーカーという人物への探求心がモチベーションになった」と語る。真意をつかむこともままならないキャラクターには普通ならストレスを感じるというが、アーサー=ジョーカー役では「どこへ飛んで行こうが自由」と開放感すら覚えたという。
役づくりで24キロの減量も敢行したホアキンは、撮影期間も一時も休むことなくアーサー=ジョーカー役にのめり込んだ。「トッド(・フィリップス監督)は24時間、週7日、僕の相談に乗ってくれた。その日の撮影が済んだ後は、電話やメールで翌日のシーンのことを何時間もかけて相談したんだ。週末は直接会って、平日に撮った分を検証したよ」「そんな話し合いを通じて、トッドと一心同体になった気がしたんだ。自分がアイデアに詰まったら、相手が知恵を絞ってくれるとお互いに思えたからね。充実感でいっぱいだったよ」と明かし、アーサーの母親役のフランセス・コンロイも「ホアキンは24時間役のままだった。素の自分を捨て、ひたすらシーンの中の現実を生きていたの。私が知っているのは、アーサーであって、ホアキンじゃないのかもしれない」と証言している。
ホアキンの名演は第76回ベネチア国際映画祭のみならず、その後上映された第44回トロント国際映画祭でも話題になっており、彼が4度目となるアカデミー賞男優賞ノミネートを果たすのは間違いないとみられている。(編集部・市川遥)
映画『ジョーカー』は10月4日に日米同時公開