のん、好奇心は旺盛に 気持ちにブレーキをかけない秘訣
女優や“創作あーちすと”など幅広く活躍を続けているのん。今回、「のんたれ(I AM NON)」という企画を通して、初の映画監督に挑戦した彼女が大事にしている気持ちを明かした。
のん、映画監督デビューの舞台裏!「のんたれ(I AM NON)」予告編
YouTubeで配信中の「のんたれ(I AM NON)」は、のんが映画監督に挑戦した1年半の軌跡を辿るドキュメンタリー作品。監督・主演・脚本・演出・衣装・編集・音楽など、映画づくりの全工程に携わる彼女の奮闘を追う10エピソードのドキュメンタリーと、完成した映画『おちをつけなんせ』が公開される。さまざまなジャンルで存在感を発揮するのんが監督デビューを果たすこととなった。
のんが監督作の舞台に選んだのは、“第二の故郷”ともいうべき岩手県にある遠野。民俗学者・柳田國男の「遠野物語」でも知られ、妖怪とも縁深い土地だ。物語の主人公の留見も妖怪を空想するのが大好きという高校生。大好きだったおばあちゃんが家から出て行ってしまい、自分の進路についても決められないでいた留見は、妖怪の世界に逃避していくことになる。
土地に滞在して制作を行う“アーティスト・イン・レジデンス”として行われた今回の企画。岩手という地を選んだ理由について「短い期間でもあったので、のんに優しい場所と考えて、お世話になった土地であれば発想も自由になれるかな、と決めました。初めて訪れた遠野はロケーションも良くて、ミステリアスな雰囲気が映像にも映える。柳田さんは私と同じ兵庫県出身で、これは導かれているかもしれないと運命的なものを感じました」と語る。
のんが挑む、ゼロからの映画づくり。「違う脳みその人が集まって作品をつくるって、こんなに難しいのかということに直面しました。人に伝えるということが本当に難しくて、てこずりましたね。頭の中がごちゃごちゃになったとき、無言で黙っちゃっていたんですが、『いま悩んでいます』と言うだけでも、何か違っただろうなといまなら思えます。こないだドキュメンタリーの映像をチェックしてて、苦しかったですね。途中で『はぁ、ご飯食べてからにしよ』みたいに止めながら見てました(笑)」
彼女が痛感したのは、人とイメージを共有することの大切さ。『エデンより彼方に』『キャロル』『ワンダーストラック』などで知られるトッド・ヘインズ監督と会ったときに「『何冊もあるんだよ』と厚いイメージボードを見せてくださって。これはあのシーンのイメージだなというのが盛り込まれていたので、これをつくる前に知ってれば! と思いました。私みたいに、ものづくりは好きだけど言葉にするのが苦手な人は、言葉の前にイメージを共有することも大切だったなぁって」と感じたそう。
後悔もあるというが、挑戦し続けることの大切さを一番知っているのも彼女自身。「自分が『これだ』と思った気持ちにブレーキをかけない、ということを大事にしています。そして、ハードルを低くすることをポリシーにしています。『自分にできるだろうか?』と思うけどやりたくてしょうがないことに対しては、すごくハードルを低くして、頑張って飛ばなくても一歩踏み出すだけで超えられるくらいに設置する。興味が疼いたときに飛び込んでいけるように」
今回の企画タイトルは「のんは、のんたれ」という言葉から。ドキュメンタリーに収められた挑戦し続ける彼女の姿が、すべてを物語っている。
「失敗するかも、怖いなと思う気持ちが無意識にあると、自分にある才能に気が付けず、自分が何者かもわからないことって、たくさんあると思うんです。私も女優を始めていなかったら、何をやっていたかわからないような……ほかのことが不器用な人間です。いま私が好奇心旺盛に活動できているのは、女優としての経験が大きいです。失敗したりうまくいったり、その度に自分がこうしたいなという欲が生まれていく喜びを知るきっかけになりました」
そんな彼女の前に進もうとするキラキラした目が印象的で、その姿に勇気をもらえるはず。遠野の人たちも参加し、たくさんの人を動かしていくのんの姿に、感動すら覚えるほどだ。
そして、たくさんのエキストラも集まり、映画は完成。喜びや苦労を感じつつも、のんは「最初はぜんぜん集まらなくて、遠野でたまたま入ったご飯屋さんで切り盛りしている奥様が交友関係の広い方で、頼んでみたら一気に集まって。人との繋がりって大切だなぁと実感しました」と明るく笑う。女優のみならず、さまざまなジャンルで挑戦を続けるのんに、無限の可能性を感じることができた。(編集部・大内啓輔)
「のんたれ(I AM NON)」はYouTubeにて12月11日までの毎週水曜に1話ずつ無料公開(現在はエピソード3まで公開中)