是枝監督、今年のアジア映画人賞授賞式へ「映画で繋ぐ役割担いたい」
第24回釜山国際映画祭で「今年のアジア映画人賞」(Asian Filmmaker of the year)を受賞した是枝裕和監督が、5日に行われた同賞の授賞式に登壇。イ・ヨングァン映画祭理事長からトロフィーと花束が贈呈された。是枝監督は、スピーチで「このトロフィーはアジアの尊敬する映画人から渡されたリレーのバトンだと思って、しっかりと次のアジアの作り手たちに渡したいと思います。隔たりや対立を超えて映画で繋いでいく役割を担っていきたい」と受賞をかみしめた。
綾野剛、森山未來、チョン・ウソンら 第24回釜山国際映画祭レッドカーペット
是枝監督は、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴを主演に迎えた新作『真実』が、同映画祭のガラ・プレゼンテーション部門に出品されていたが、スケジュールの都合でオープニングセレモニーへの参加はならず、セレモニーで行われるはずだった「今年のアジア映画人賞」授賞式が、アジアプレミア上映の前に行われた。
是枝監督は、受賞スピーチで「オープニングセレモニーに出席できなくて残念でしたが、こういう名誉賞をいただくと、そろそろしがらみから解放されるのではないかと不安になります。監督生活は25年になりますが、映画に出演したカトリーヌ・ドヌーヴさんのように現役で、これからも作品を作っていきたいと思います」と意欲を見せた。
なお、授賞式に先立って登壇したイ理事長がウイットに富んだジョークを飛ばす一幕も。イ理事長が「わたしは是枝監督の作品はどれも好きだが、最近特に好きな映画ができました、それは『海よりもまだ深く』(2016)です」と述べると場内は大爆笑。実は、同映画の韓国題は『台風が過ぎて』という意味。オープニングセレモニー当日の朝に釜山を襲った台風18号を皮肉ったもので、イ理事長は「台風を楽しむように是枝監督を迎えよう」と挨拶を締めた。
授賞式後の本編上映前にチョン・ヤンジュン映画祭執行委員長は「是枝監督は釜山国際映画祭に多く参加した映画人の一人」と紹介し、是枝も「釜山国際映画祭と共に自分の映画人生も歩んできました」と互いに映画という共同体でつながった絆を確かめ合っていた。釜山国際映画祭は10月12日まで開催される。(取材・文:土田真樹)