森山未來、7年ぶり海外映画祭に参加強行の理由
俳優、ダンサーの森山未來が3日、第24回釜山国際映画祭のオープニングセレモニーのレッドカーペット、及びオープニング作品として選出された日本・カザフスタン合作の主演映画『オルジャスの白い馬』(2020年1月18日日本公開)の記者会見に登壇。舞台「オイディプス」の上演を間近に控え多忙のなか、本映画祭に参加した理由、海外の作品に飛び込むことで得られる充実感について語った。
<写真たくさん>綾野剛、森山未來、チョン・ウソンらレッドカーペットの様子
放送中の大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~」では落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)の若き日である美濃部孝蔵を演じたのみならず、鮮やかな「語り」も注目を浴びた森山。10月7日には市川海老蔵、黒木瞳と共演する舞台「オイディプス」がBunkamuraシアターコクーンで上演開始となる。そんな多忙期に、一体何が森山を釜山に導いたのか。
森山の海外映画祭への参加は、2012年の主演映画『苦役列車』が上海映画祭でワールドプレミア上映された時以来。強い希望から参加した釜山国際映画祭のレッドカーペットには、『オルジャスの白い馬』の日本、そしてカザフスタンからのスタッフ・キャストが集結。共同で監督を務めた竹葉リサ、エルラン・ヌルムハンベトフ、ともに主演を務めたサマル・イェスリャーモワらが再会した。
「上海映画祭ではこういうオフィシャル会見のような場はありませんでしたし、他の海外の映画祭にも行った経験がなかったんですよね。だからオープニング作品に選ばれるという意義もよくわかっていなかったのですが、それは映画祭の『顔』というような意味を持つようで、すごいことなんだと。また、こういうタイミングでないとエルラン監督やサマルにもなかなか会えないので、せっかくの機会だからぜひ行きたいと思いました」
オープニング作品の『オルジャスの白い馬』は、カザフスタンの大自然を背景に、父親を亡くした母子と、彼らの前にふらりと現れた男の交流を描く物語。森山が演じるその男カイラートは、寡黙だが優しくタフな男で、名作西部劇『シェーン』(1953)を彷彿とさせるキャラクターだ。森山が全編カザフ語に挑んだことも話題だが、言語の問題よりも「ステキな大自然の中にどう立てるかということしか考えていなかった」と言い、カイラートという人物について意外な事実を話した。
「カザフスタンの言葉をしゃべってはいますけど、映画では彼が何者であるのかという情報ははっきり出てこないんですよね。わかるのは、その場所における異邦人であるというだけで。もちろんカザフ語については言葉、発音も全くわからない状態からのスタートだったので(自分を)信じてやるしかなかったですけど、ぎくしゃくした、つたない感じというのがカイラートを異邦人として際立たせるのに効果的になっていたらいいなと思います」
カザフスタンのスタッフ主導の現場にも、大いに刺激を受けたようだ。「カザフスタンのスタッフはラフなところもあるし、スケジュール通りにいかずその日の状況に合わせて動いていく、という臨機応変な対応が求められる現場でもありましたけど、エネルギッシュな人たちでしたし、人間がタフで温かい。単純に、すごく楽しかったです。変に気を使われることも、使うこともなかったですし、かなり現場にはなじめたと思います」
森山は2013年10月から1年間にわたって、文化庁の文化交流使として単身イスラエルに渡り、現地のダンスカンパニーに所属。昨年12月にはデンマーク、日本、ノルウェーの3か国による合作映画『MISS OSAKA』への出演が発表され、海外での活動も依然、精力的だ。そういった経験が、本作で実を結んでいることも実感している。
「イスラエルだけでなくヨーロッパやいろんな国で仕事をしてきているので、恐怖心などは特になかったですね。映画に限らず、海外の現場では自分がやりたいこと、やりたくないことを自ら主張していかなければならないことが多いので不安を感じることも多いと思うんですけど、そういう意味では僕は海外での経験を経て、自分で動かなければいけない、何かを立ち上げなけれならないという意識を常に持つようになりました。その方が楽しいし、やりがいを感じます」
そう、よどみなく語る森山は、劇中カザフスタンの雄大な自然に見事に溶け込んでおり、荒野で颯爽と馬を駆る姿に魅せられるはずだ。(編集部・石井百合子)