『カメラを止めるな!』後に大スランプ 上田慎一郎監督を救ったスタッフの言葉
社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』に続く上田慎一郎監督の劇場長編第2作『スペシャルアクターズ』(10月18日~)が、まもなく公開を迎える。制作の過程で『カメ止め』のプレッシャーが突如として襲い、大スランプに陥ったという上田監督は、あるスタッフのメッセージに救われたという。
『スペシャルアクターズ』は、松竹ブロードキャスティングが作家主義と俳優発掘をテーマに掲げる、オリジナル映画プロジェクトの第7弾作品。1,500通を超える応募者の中からオーディションを経て15人の役者を選抜し、その役者たちに合う物語をゼロから創り上げていった。
上田監督は創作のプロセスを「茨の道」と表現。どんな物語を考えても壁にぶち当たり、「どれもカメ止めを超えるものには思えない」と重圧を感じていた。そんな中でも道筋を見つけ、一つの物語を立ち上げて映画を前提としたリハーサルも行ったが、脚本の段階になると再び筆が止まる。
クランクイン予定日まで2か月を切り、初稿の台本を渡すはずだった日には、「ゼロから考え直したい」とキャストに伝えた。「気絶しそうだった」という上田監督のもとに、今回の企画をオファーした松竹ブロードキャスティングの深田誠剛から長文のLINEが届いたのはその夜のことだった。
「サザンの桑田さんはデビュー作『勝手にシンドバッド』が大ヒットした後、大きなプレッシャーに苛まれたそうです。結局、2曲目の『気分しだいで責めないで』は『勝手にシンドバッド』を超える大ヒットとはいきませんでした。3曲目が『いとしのエリー』です。でも、必要な2曲目だったんです。うちは2曲目になってもいい。上田さんの好きなものを創ってください」
この言葉に上田監督は「暗闇の中で、パッと、電気が点きました」と窮地を脱する。そこからは「一緒に考えて欲しい」とキャストたちからもアイデアを募り、インスパイアされながら『スペシャルアクターズ』の物語が動き出していった。今作の主人公は、極限まで緊張すると気絶してしまう売れない役者・和人。疎遠だった弟から演技を駆使した何でも屋の俳優事務所「スペシャルアクターズ」に誘われたことから、旅館の乗っ取りを企むカルト集団を撃退するミッションに巻き込まれていくさまを描く。
先に俳優を決めて当て書きしただけあって、主人公をはじめとしたキャラクターの個性は存分に発揮されている。世界観も絶妙で、『カメ止め』のような予測できないストーリー展開にも期待がかかる。上田監督は監督・脚本・編集のほか、宣伝プロデューサーも兼任。4役を務めて新作を世に送り出す。(編集部・小松芙未)