渥美清さんはもの静かな方…竹下景子が語る『男はつらいよ』の思い出
女優の竹下景子が26日、角川シネマ有楽町で行われた映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』上映後に行われたトークショーに出席、撮影当時の裏話を明かした。
シリーズ22年ぶりの新作!『男はつらいよ お帰り 寅さん』予告編
備中高梁にやってきた寅さん(故・渥美清さん)が、蓮台寺の住職の娘・朋子(竹下)に一目惚れしたことから起きる騒動を描いた本作。この日、こっそり観客と一緒に映画を観ていたという竹下は、「考えてみたら『口笛を吹く寅次郎』を観るのは、封切り以来はじめて。お客さんがいろんなところでクスクス笑ったり、一斉にワーッとなったりして。映画館ってなんともいいですね。テレビでもオンエアがありますし、お茶の間で観るのも楽しいんですけど、映画館で観るのってなんといいんだろうと思いましたね」としみじみ。
竹下は第32作の『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(83年)、第38作『男はつらいよ 知床慕情』(87年)、第41作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(89年)と、それぞれ違う役柄で三度マドンナを演じている。本作のメガホンをとる山田洋次監督と会った時のことを「お話をいただいて、神楽坂の(旅館)和可菜で面接がありまして。そこで監督さんとはじめてお目にかかりました」と述懐した竹下は、「とにかくわたしが監督にお目にかかることも大変緊張していましたので、撮影中も身近な話や、俳優論などいろいろとお話をしてくださいました」と撮影中の思い出を語った。
主人公の寅次郎を演じた渥美さんは「もの静かな方」だったそうで、竹下は「普段は撮影の準備に入ると、『わたしは病人でございますから』と言って休憩に入られるんですが、時にはまわりの空気を察したのでしょうか。そこに集まっていた、主に俳優たちにお話をしてくださるんです。例えば若い頃にアフリカにいらしていた話などを」と当時のエピソードを披露。
さらに、渥美さんから「お嬢さん、何か不思議な話を知りませんか?」と言われたことがあったことを明かすと、「でもわたしは第六感もなにもないなと思っていたら、渥美さんがおもむろに『青い空がギラリと光って……』と話し始めて。渥美さんの語り口でついつい引き込まれてしまうんです」と懐かしそうな顔に。「もうリハーサルから笑いっぱなしで。カメラマンの高羽哲夫さんも笑ってしまって。フレームが揺れてカットになったことがあったくらいですから」と付け加えた。
今年は、シリーズ22年ぶりの新作となる『男はつらいよ お帰り 寅さん』が12月27日に公開される。「ビックリしますよね」という竹下は、「山田監督の中で寅さんがずっと生きているので。渥美さんが生きていたらいつでも続編が作れるのにとおっしゃっていたので。みんなの寅さんは心の中にずっと生き続けているんだなと思いました」と感慨をにじませた。(取材・文:壬生智裕)
『男はつらいよ』4Kデジタル修復版(15作品)は11月7日まで角川シネマ有楽町にて上映中