戸田恵梨香、朝ドラヒロインにつながる過去の自分
NHK連続テレビ小説「スカーレット」でヒロインを演じる女優・戸田恵梨香。「家族とは何か?」を問いかける最新映画『最初の晩餐』も先ごろ公開を迎えた。「これまでの経験が全て朝ドラに生きている」という戸田がキャリアを積み重ねてきた今、思いを語った。
本作は、父の遺言による目玉焼きから始まる唯一無二の通夜ぶるまいを通じて、一家のさまざまな思い出がよみがえるさまを描き出す物語。姉・美也子役の戸田と弟・麟太郎役の染谷将太を中心に、再婚した両親役の永瀬正敏と斉藤由貴、連れ子の兄役の窪塚洋介など、豪華な面々が顔を揃えた。
本作のオファーを受け、脚本と出会ったのは、戸田自身が「家族って何だろう?」と思い始めたときだったという。その物語に触れて「ハッとさせられた」という戸田は「家族といってもさまざまなカタチがあるし、明確な答えがないもの。それぞれに喜びがあり、葛藤があり、隠しごとだって持っている……。この映画に参加することによって、家族に対する自分の答えは『どこに行き着くのだろう?』という興味も湧いてきた」と声を弾ませる。
以前から「本当に『残していきたい』と思える作品にたくさん出会えています」と語っていた戸田だが、家族の本質を問う本作も、特別な作品の一つとして心に刻まれたのではないだろうか? 「家族に対しての悶々とした気持ちを浄化してくれた作品なので、きっと今後も何かのときに思い返す、大切な『心の支え』になると思います」と笑顔を見せる。
そして現在は、朝ドラ「スカーレット」が放送され、日本中にヒロインとしての元気な姿を届けている戸田。クランクイン前は「長丁場なので肩の力を抜いて頑張りたい」と意気込みを語っていたが、いざ撮影現場に入ってみると、「予想以上に大変でした」と気持ちを吐露する。「毎週、毎週、民放の連ドラ1話分のセリフを覚えているんじゃないか、というくらい。(朝ドラは)およそ3週分をまとめて撮っていく感じで、頭も相当使うので、全てに肩の力を入れていたら壊れちゃいます」と笑う。
そんな戸田は、映画への出演とともにドラマを主戦場として活躍してきた。「民放の連ドラは、(朝ドラと比べて)スケジュール的には圧倒的にきついのですが、頭を切り替えられるタイミングが多いんです。がっつりやるときはやって、休むときは休む。だから、全く違う仕事をやることも可能ですが、朝ドラは基本的にずっと続いていく。そのぶん、集中できるんです」と語る。
戸田にとって、女優としてのキャリアを十分に積んでから挑んだ、今回の朝ドラヒロイン。過酷な撮影現場に多少の戸惑いはあっても、ドラマなどでの豊富な経験で「乗り越えられる」と余裕ものぞかせる。「たぶん、私が新人の役者だったら、自分の芝居のことだけで頭がいっぱいになって、大変なことになっていたと思いますが、私の場合、いろんな場所で、いろんな経験をしてきているので、周りを見わたせるゆとりが多少はあると思うんです。だから、みなさんに『がんばろう!』と声をかけて、一緒に手を取り合って行けるところは、これまでのキャリアが生きているかなって思います」とニッコリ。
これまで積み重ねてきた経験があるからこそ、心に余裕が生まれ、スタッフや共演者の苦労や喜びを分かち合える。「30歳を超えてから朝ドラに出られてよかった」と満面の笑顔で語る戸田にとって、朝ドラは一つの集大成となっているようだ。(取材・文:坂田正樹)
映画『最初の晩餐』は公開中