『フォードvsフェラーリ』レーシングカーは全部本物!監督こだわりのレースシーン
1966年のル・マン24時間耐久レースをめぐる実話を映画化した『フォードvsフェラーリ』(公開中)のジェームズ・マンゴールド監督がインタビューに応じ、本作の製作を振り返った。
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マンゴールド監督といえば、ヒュー・ジャックマン主演のアメコミ映画『LOGAN/ローガン』(2017)を世界的ヒットに導いたことが記憶に新しい。大ヒット作品を手掛けた後で重圧も感じていたというマンゴールド監督は、『LOGAN/ローガン』とは全く違うタイプの映画を製作することで、プレッシャーを跳ね返したという。「アメコミ大作映画から一歩下がることが重要だった。本作はドラマ性があり、1966年に生きた人々の姿を映し出すと共に、ダイナミックなシークエンスも多く取り入れた。大作はもちろん、低予算映画で学んだことを生かした集大成とも言える映画を作ったよ」
フォード・モーター社から1966年のル・マンでの勝利を命じられ、王者フェラーリに挑んだカー・デザイナー(マット・デイモン)とドライバー(クリスチャン・ベイル)の挑戦を描く本作。実話を映像化するにあたり、マンゴールド監督は舞台となった1966年のトーンや雰囲気を表現することにこだわった。「事実をただ描いた作品を観るなら、その出来事について記された本を読んだ方が楽しい。映画はその時代の雰囲気や、登場人物の心情などを表現することができて、その時代にいるような体験を提供することが可能だ。本作では、1966年のル・マンの雰囲気を観客に味わってもらうことが使命だったんだ」
マンゴールド監督の言葉通り、劇中で描かれるル・マンは臨場感溢れる仕上がりとなっており、フォードとフェラーリが激突する白熱のレースシーンは圧巻だ。劇中に登場するレーシングカーは「全部本物」と話す監督は「あのレースをリアルに描き切るためには、本物の車を使って、動きなどを忠実に再現する方が手っ取り早い。ル・マンには行けなかったため、レース会場や観衆、フラッグはVFXで処理しているが、レーシングカーは本物。一度もデジタル処理したものを使わなかったんだ」とこだわりを明かした。
打倒フェラーリに燃える男たちのドラマを映し出す本作は、編集前の段階で3時間30分超えのボリュームだった。マンゴールド監督によると、キャロル・シェルビー(マット)がフォード社が開発するレーシングカーを視察するシーンなどがカットされたそうで「シーンを削るのは大変だが、編集していると、自然とどのシーンをカットするべきか映画が教えてくれたよ」と編集過程を振り返る。近年は、劇場公開後にディレクターズ・カット版がリリースされる作品も見られるが、監督は「この作品では公開しない。かつては私も行っていたが、今回は劇場公開しているものが完璧な作品だよ」と自信をのぞかせていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)