田中裕子、15年ぶり映画主演 『おらおらでひとりいぐも』で蒼井優と二人一役
女優の田中裕子が、芥川賞作家・若竹千佐子のデビュー作品を映画化した『おらおらでひとりいぐも』で、15年ぶりに映画主演を務めることが明らかになった。夫に先立たれ、途方に暮れる女性の心の声を描いた作品で、田中は初共演となる蒼井優と二人一役に挑む。監督は『南極料理人』『モリのいる場所』などの沖田修一。撮影は昨年11月から12月に都内近郊で行われており、公開時期は2020年を予定している。
原作は、第54回文藝賞を史上最年長で受賞し、第158回芥川賞も獲得した若竹のベストセラー作品。夫に先立たれた女性・桃子さんの人生を「娘の時代」「妻の時代」「祖母の時代」の3つに分けて描き、すべての世代の人から共感を得た。 映画は、75歳の桃子さんの孤独な生活が賑やかな毎日に変わっていくさまを描き出す。
75歳の桃子さんを演じるのは、NHK連続テレビ小説「おしん」で知られ、昨年公開の映画『ひとよ』で愛する夫を殺した母親を熱演したことも記憶に新しい田中裕子。『いつか読書する日』(2004)以来15年ぶりの映画主演となる田中は「私も日々朽ちていくのでありますが、この歳になってこの作品に会えて、沖田監督にお会いできて、嬉しいです。監督の撮影中の一喜一憂される姿が目に焼き付いています。私のこれからの日々に監督のあの姿を思い出してニヤニヤできる事が、私にとっての小さな春になりそうです」と喜びを明かしている。
田中ふんする桃子さんの「娘の時代」「妻の時代」(20~34歳)を演じるのは、新作『ロマンスドール』(1月24日公開)も控える蒼井優。「『田中裕子さん主演、沖田修一監督作品』という、何があっても映画館で観たい作品に、自分も携わらせていただけたこと、心から嬉しく思います」と感謝する蒼井は、「1人の人生にスポットをあてた作品でありながら、壮大で奥行きのある、ユーモア溢れた作品になっていると思います。オファーをいただいた時から、早くこの作品を観たくてたまりません。田中裕子さんとご一緒させていただくことも夢でしたので、世界中に自慢したいくらい幸せです」とコメント。
原作に惚れ込み、本作の脚本も執筆した沖田監督は「この原作をどうやって映画にするのか、企画をいただいた時、映像化が難しいと思う反面、他にないような不思議な映画になりそうだとも思いました」と告白。主演の田中とのタッグについては「毎日が刺激的で、緊張もありましたが、桃子さんの、生活の機微のようなものを撮っている時の、あの楽しさを思い返すと、とても素晴らしい時間だったと思います」と振り返る。
また、原作者の若竹は「『おらおらでひとりいぐも』が映画になるなんて夢のようです。ましてあの田中裕子さんが主役だなんて!! 同世代、大好きな女優さんです。桃子さんが大勢の人を介してもう私の手の届かないところに大きく羽ばたこうとしています。作者として何より嬉しいことです」と映画化に対する心境を明かしている。(編集部・倉本拓弥)