想像を絶する迫害…ホロコーストから逃れる少年を追う『異端の鳥』公開決定
ホロコーストから逃れるために疎開した少年が、周囲の人々から想像を絶する迫害を受けるさまを追った、映画『異端の鳥』が、2020年の初夏に全国公開されることが決定した。
本作は、第2次世界大戦中、ナチスのホロコーストを逃れて、東欧のどこかに疎開した少年の旅を描いた衝撃作。住処を失って放浪する少年が目の当たりにし、体験する、“普通の人々”による差別とむごい仕打ちを描き出す。昨年の第76回ベネチア国際映画祭において、最高賞を受賞した『ジョーカー』と共にコンペティション部門で上映されたが、あまりに過酷な描写に途中退場者が続出。コンペ受賞は逃したがユニセフ賞を受けたほか、ノミネートはならなかったものの、アカデミー賞の国際長編映画賞チェコ代表に選ばれるなど、高い評価を得た。
迫害を生き抜くうちに心を失っていく少年を体当たりで演じきったのは、新人のペトル・ コトラール。さらに、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、ウド・キア、バリー・ペッパーなど、ハリウッドでも活動する実力派俳優を起用。撮影監督を1996年にアカデミー外国語映画賞を受けた『コーリャ愛のプラハ』のウラジミール・スムットニーが務め、約3時間にわたって、モノクロームの圧倒的な映像美で、人間の本性に迫る、美しくも残酷な物語がつづられる。
原作は、自身もホロコーストの生き残りであるポーランド出身の作家イェジー・コシンスキが、アメリカ亡命後の1965年に発表した「ペインティッド・バード」(初版邦題:異端の鳥)。少年が体験するグロテスクなまでの暴力、虐待の数々を描いた本作はベストセラーとなった一方、ポーランドで発禁となり、アメリカでも物議を醸すことになった。コシンスキ自身は、1991年に謎の自殺を遂げている。
まさに“いわくつき”の本作を映画化するため、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督は、3年かけて17のバージョンのシナリオを用意。資金調達に4年をかけ、主演の子役の成長過程に合わせて、撮影に2年を費やして映像化に挑んだ。劇中の言語には、舞台となる国や場所を特定されないよう、人工言語「スラヴィック・エスペラント語」を採用している。(編集部・入倉功一)
映画『異端の鳥』は2020年初夏TOHOシネマズシャンテほか全国公開