映画『キャッツ』撮影現場での生歌にこだわり
先月24日より日本でも公開され、全国映画動員ランキング1位スタートを切った映画『キャッツ』。大ヒットミュージカルを『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督が実写映画化した本作は『レミゼ』同様、撮影現場での生歌にこだわって制作された。
ロンドンの片隅にあるゴミ捨て場に集まった“ジェリクルキャッツ”=人間にこびず、気高く生きる個性豊かな猫たちの世界を描いた本作。人気歌手のテイラー・スウィフト、『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソン、オスカー女優のジュディ・デンチら豪華キャストが猫を演じている。
本作の見どころの一つといえば、豪華キャストたちが歌って踊るミュージカルナンバーの数々。しかも、その歌は『レミゼ』と同じように、撮影現場で実際に演技をしながら歌ったものが使用されている。フーパー監督は「今回は踊りもあるから、そんなことできるの? といわれますが、彼らの身体能力を見ればわかるよ。そうすることで、その瞬間の心情をより伝えることができるんだ」と語る。
「先に収録したものを使うと、それに合わせて演技をしなければならない。俳優たちがよく言うのは、例えば2か月前に録ったときから、すでに心情的に進歩しているのに、それに合わせるのは恥ずかしいと。今ならもっと上手にできるのにと思いながらも、それに合わせなければならない。特にエモーショナルな歌であれば、生歌を使うのが一番いい」
役者たちにはそれぞれの耳の形にカスタムされ、踊っても落ちないように作られたイヤーモニターから音が送られ、モーションキャプチャースーツのヘッドセットに組み込まれたマイクで彼らの声を拾った。
さらに、誰かが歌っているときに生じてしまう、ダンサーたちが動き回る音に関しても、フーパー監督たちはそのまま残す決断をした。「トムは撮影の過程で生じるノイズを尊重して残したがった」と録音のサイモン・ヘイズは言う。
「彼はそのノイズが撮影しているパフォーマンスから出た本当のものであるなら、そこにはある種の感情が宿っていると考えているんだ。ダンスを踊った役者が息を切らす音が聞こえたら、そのリアリティーに観客は親近感を抱くことだろう。リアルなものを見ているんだということが伝わるからね」(編集部・中山雄一朗)