D.O.自ら丸刈り頭を提案!『スウィング・キッズ』で見せた役者魂
映画『スウィング・キッズ』(2月21日公開)の主演を務めたD.O.の丸刈り頭は、本作の役づくりのためにD.O.自らが提案したものであったことをカン・ヒョンチョル監督がインタビューで明かした。
韓国の大人気ボーイズグループ・EXOのメンバーとして活躍するD.O.。本作では、朝鮮戦争中の巨済島捕虜収容所きってのトラブルメイカーである朝鮮人民軍のロ・ギスを演じたが、当初監督はアイドルであるD.O.が丸刈りにするのは難しいと思い、他のヘアスタイルを考えていたそう。「けれど、D.O.さん自ら丸刈りにしたいと言ってくれて。もうこの髪形しか思いつきません、ということでその場で丸刈りにしてくれました」
D.O.が本作のために行った準備は、丸刈りだけではない。華麗なタップダンスから北朝鮮の方言まで、約5か月間に及ぶ猛特訓の成果をスクリーンで存分に披露している。「俳優D.O.の人生に運命というものがあるならば、この映画と出会う運命が必ずあっただろう」。そう語る監督は、D.O.と最初に会った時からその運命の予感を抱いていたという。
「最初のミーティングでD.O.さんに会った時に、事前に彼の方が部屋に入っていて、最初に見えたのは後ろ姿だったんです。でも、後頭部がロ・ギスそのものでした。振り返って正面を見た時、さらにロ・ギスに近かったんです。まずルックスからしてそう思いました」
本作ではそんなロ・ギスが、収容所の対外的イメージアップのために寄せ集められたタップダンスチームの仲間たちとダンスを通してつながっていくさまが描かれる。チームを引っ張っていくリーダーのジャクソン役は、トップタップダンサーのジャレッド・グライムスが務めた。
ブロードウェー・ミュージカルの最優秀ダンサーに贈られるアステア賞にも輝いたジャレッドが、どのようにして本作に参加することになったのだろうか? キャスティング経緯について、監督は「原作は韓国のミュージカルなんです。小劇場でやってるようなミュージカルで、そのミュージカルには黒人の兵士が一人登場するんですが、韓国のミュージカルなので韓国の俳優さんが黒人のメイクをしてタップダンスを踊るんです。上手いことは上手いんですが、感情面をしっかり伝えるほど上手いかというと、ちょっとそこまではいっていない。なので、映画を撮るときは本当に実際に上手く踊れる黒人の方を使いたいという思いがありました。それで全世界でオーディションを展開して、候補の方にも来ていただいて、その中で適役だと思われたのがジャレッド・グライムスさんでした」と振り返る。
人種や思想・イデオロギーを超え、一丸となっていくタップダンスチームの姿は、多様性が叫ばれる現代社会を生きる観客たちに強いメッセージを訴えかける。共通の言語を持たない人たちがダンスでつながっていく……撮影中には映画のストーリーと同様の出来事が起こった。「何か月間か一緒に撮影をしたんですが、最初の頃は私がディレクションをするとそれを通訳がジャレッドさんに伝えて演じてもらっていたんです。でも、ある瞬間から私が韓国語で話すとジャレッドさんがうんうんってうなずいて、そのまま演じてくれるという不思議なことがありました」。言葉が伝わらなくても、監督はジャレッドと映画を通してつながっていると感じられたようだ。
華麗なタップダンスと音楽に胸がときめくダンス映画である一方で、朝鮮戦争という歴史が背景にある戦争映画でもある。監督が「今まだ韓国は戦争中ともいえる、そういう背景にあります」というように、韓国と北朝鮮の間にはいまだ軍事境界線があり、現在に至るまで休戦状態が続いている。
「この映画を観終わった後に振り返ってみると、『戦争はまだ終わっていないんだな』ということを実感します。それから何よりも愛おしい人たち、愛すべき人たちが映画の中では死んでしまいます。それはもしかしたら自分かもしれないし、一番好きな人かもしれないし、友だちかもしれない。つまり、他人事ではないということを伝えたかったんです。映画は非常に衝撃的な方法で終わるんですが、(観客に)そんな気持ちを感じてほしいと思いました」。(編集部・吉田唯)