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子役時代から薬漬け…伝説の女優を“犠牲者”として描きたくなかった『ジュディ 虹の彼方に』インタビュー

ジュディ・ガーランド役で2度目のオスカーに輝いたレネー・ゼルウィガー - 写真:鈴木香織
ジュディ・ガーランド役で2度目のオスカーに輝いたレネー・ゼルウィガー - 写真:鈴木香織

 伝説の女優ジュディ・ガーランドの晩年を描いた映画『ジュディ 虹の彼方に』で主演を務め、オスカーに輝いたレネー・ゼルウィガーがテレビ電話でのインタビューに応じ、徹底した役づくりの裏側や、ジュディへの愛で満ちた撮影現場の様子について語った。

【画像】激変!ジュディ・ガーランドそっくりになったレネー

 『オズの魔法使』のドロシー役で一世を風靡し、『若草の頃』や『スタア誕生』など圧倒的なカリスマ性と歌唱力で知られたスターの悲しい晩年と美しい真実を描いた本作。体重管理と撮影スケジュールを休みなしでこなすことを目的に、子役時代から大人たちに薬漬けにされたジュディは、生涯にわたって不眠症、不安神経症、アルコールや薬物の深刻な問題を抱えることに。本作は度重なる遅刻などでハリウッドのブラックリストに載せられ、破産して家もなくした彼女が、薬物の過剰摂取によって47歳で命を落とすことになる前の年、1968年冬から行われたロンドン公演に挑むさまを描いている。

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 脚本を渡されたレネーがこの役を引き受けることになったのは、とても自然な流れだったという。「実は“ジュディを演じる”って決めたわけじゃなかったの。脚本を読んだら好奇心を刺激され、ただいろいろと調べ始めた。なぜなら彼女が人生を通して直面していた苦しみ、晩年の困窮というものをわたしは全然知らなかったから。彼女について知れば知るほど、魅了され、深く共感し、敬服した。だから調べ続けたの。伝記をはじめ見つけられたものは全て読んだ。そうしたものは著者のバイアスが入るものだから、何が事実でそうでないかを見極めなければいけないわ。彼女が出たテレビ番組やインタビュー、写真も見た。アーカイブにあるものは全てね。もちろん彼女の音楽も聴いた。ボーカルコーチと歌のトレーニングをして、高速道路を一人車で走りながらわめいていたわ。そこでなら誰にも聴かれないから(笑)」

 伝説的な人物を演じるとなると単にモノマネのようになってしまう危険もあるが、レネーはジュディの魅力、脆さ、そして不屈の魂まで見事につかんだ。レネーはそこに至るまでを「全てがコラボレーションだった」と振り返る。

 「日々、皆が彼女のストーリーを話し、共有していた。彼女の写真、音楽が至る所にあった。監督は『僕たちは宝物を掘り起こしている。真実の彼女を描くために』と言っていた。この映画は彼女に対する美しい祝福から生まれたの。皆が個人的な彼女への感謝を表現したがっていた。映画に関わる全ての部門の人々がそうだった。そうして撮影が始まると、皆が同じ立場にいた。彼女の魂が封じ込められているように感じたの。それは本当にまたとない経験だった」

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 レネーがルパート・グールド監督とプロデューサーのデヴィッド・リヴィングストーンに最初に会った時に伝えられたのも、ジュディを“過去の犠牲者”としては描きたくない、という強い思いだった。「彼らがこの映画を作りたかったのは、彼女が悲劇的な人だという概念を覆したかったから。彼女はステージに立ち続けるため、何度も、何度も、苦難を乗り越えていったの。彼女は真の英雄だった。本当に並外れた人物だわ」

レネー・ゼルウィガー
温かくとびきりチャーミングなレネー

 そして、レネーが晩年のジュディとして、彼女の代表曲と言うべき「虹の彼方に(Over the Rainbow)」を大勢の観客の前で歌い上げるシーンはただただ心を震わす。「あれは最後に撮ったものだった。ライブパフォーマンスを撮ったその週ずっと、撮影の合間に観客役の俳優たちと話をしていたの。なぜジュディを愛しているのか、それぞれの人生にとってどんなに意味がある人なのか、『わたしの両親もライブに行っていたの!』とか『わたしもそこにいて、パフォーマンスを見た! 彼女はこんな人だった』とかね。だからあの瞬間、あの空間は、彼女への愛で本当に満たされていた」

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 「そしてわたしは、この歌を、彼女の人生のこの段階で歌う意味というものも考えていた。初めて歌った、少女時代と比べてね。これは、希望と可能性、夢は実現できると信じることについての歌。ジュディの晩年のことを考えると、彼女がそれでも信じることと可能性について歌い続けたということが、本当に、本当に勇気のあることに思えるの。それにとても強く心を動かされたわ」

 一時は6年にわたって女優業を休業し、本作で16年ぶり2度目のオスカーを受賞してカムバックを飾ったレネーだが、これからについては急いではいない。「まずは人生のケアをしなくちゃ。わたしの犬たちとかね!(笑) 腰の手術をした子がいるから回復させないと。それが最初にやることね。いくつかプロジェクトもあるけど、どうなるでしょうね? わたしは焦ったりしないわ。だってこの映画は本当に特別な経験だったから。3年を通してクルーたちと家族のようになった。だから急いで次に飛び乗ったりはしない。まあ見ていて」ととびきりチャーミングなほほ笑みを浮かべた。(取材・文:編集部・市川遥)

映画『ジュディ 虹の彼方に』は公開中

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