補償なき現状…経営難のミニシアター、製作スタッフも失業状態で業界窮地
緊急事態宣言を受け、対象地域となった東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の映画館は、8日から営業を休止した。大手シネコンはもちろんだが、小規模経営のミニシアターは、これまでにない存続の危機に直面している。
ミニシアターは興行のみで運営している例がほとんどで、観客を入れられなければ、チケット代金のほか、売店の売り上げなどの収入はゼロになってしまう。緊急事態宣言の対象となった地域のミニシアターは、多くが都市部にあるため、賃料も高く、抱えている従業員の数も多い。緊急事態宣言の効力は1か月とされているものの、いつまで休業を余儀なくされるのか不透明な状況で、経済的な補償がなければ、閉館に追い込まれる可能性が高い。
この窮状を受け、映画人も立ち上がった。6日に発足した「#SaveTheCinema『ミニシアターを救え!』プロジェクト」では、「Change.org」を通じて賛同者を募り、政府に緊急支援を要請する要望書を公開。ミニシアターを救おうと、多くの賛同が集まっており、『淵に立つ』の深田晃司監督、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が発起人となり準備中の「ミニシアター・エイド基金」とも連携する。
また、映画の作り手たちにもコロナの影響が広がっている。4月10日の公開予定が延期となった『彼女は夢で踊る』の時川英之監督は「インディー系の映画はミニシアターが頼りです。都市部の劇場は、(上映期間を)1週間入れてもらうのも大変。今回の延期によって、公開が決まっていた30館での上映の全ての予定が白紙になりました」と話す。宣伝活動も続けてきた中「(緊急事態宣言を受けての)公開1週間前での延期決定に、劇場も僕らも精神的なダメージが大きい。今は、多くの作品の公開が後ろにずれた状況で、いつもにも増して劇場の奪い合いがあちこちに出てくると思う。そこに、僕らの小さな作品を組み込んでいただけるのかという心配もあります」。
映画の撮影も軒並み中断、延期され、フリーランスの現場スタッフも生活の危機に直面している。ある録音部のスタッフは「4月から6月まで入る予定だった現場は、全てキャンセルになりました。今はまだ貯金を崩して生活できているが、この状況では、飲食店等のアルバイトで生活を支えることもできない」と嘆く。
この窮状は劇場やライブハウスも同じだ。海外では文化芸術を守る動きが広がっており、イギリスでは、イングランド芸術評議会が1億6,000万ポンド(約210億円・1ポンド・130円計算)の緊急支出を決定。フランスの文化省は緊急支援策として3月18日に2,200万ユーロ(約26億円・1ユーロ120円計算)の拠出を決定し、映画分野においては入場税の支払いの一時停止、CNC(仏国立映画センター)は劇場等への助成金支払いを前倒しするという。アメリカでも米国芸術基金が、新型コロナウイルスで危機に瀕する芸術機関の支援に、7,500万ドル(約83億円・1ドル・120円計算)を用意する救済計画を発表している。
日本の文化庁は、3月28日に宮田亮平長官による「日本の文化芸術の灯を消してはなりません」というメッセージを出したのみ。具体的な補償や支援策には触れられていない。(森田真帆)