『デッド・ドント・ダイ』ティルダ・スウィントンの剣士キャラのイメージになった残酷日本映画
インディペンデント映画界の雄ジム・ジャームッシュ監督が、キャリア初のゾンビ映画に挑んだ『デッド・ドント・ダイ』。ビル・マーレイやアダム・ドライヴァーなど、豪華キャストが個性的な役どころを務める本作のなかでも一際異彩を放つのが、『ドクター・ストレンジ』のティルダ・スウィントンが演じた葬儀屋・ゼルダだ。なぜか空手道技で日本刀を振るうこのキャラクターについて、ジャームッシュ監督が語った。
本作は、アメリカの片田舎で起きたゾンビパニックに巻き込まれた住人たちを描くコメディー風味のホラー映画。全編にオフビートな笑いを散りばめながら、現実社会への警告が込められた、正統派ゾンビ映画でもある。
だからこそ一際目を引くのが、ティルダふんする町の葬儀屋ゼルダだ。個性的な町の住人のなかでも特に浮世離れした彼女は、仕事の合間に剣の修行に打ち込んでおり、空手道着姿に日本刀といういでたちで、次々とゾンビをなぎ倒していく。
葬儀屋という職業は、ジャームッシュ監督に「これまで演じたことがないような役柄で、アメリカの小さな町にやってきた外国人という設定なら、どんな職業がいいかな?」と尋ねられたティルダが出したアイデアで「彼女はすごく映画に詳しくて、サムライ映画も観ているのはわかっていたんだ。だから、(日本刀を振るう)役のために、こんな映画を参考にしてほしいと言ったこともなかった」というジャームッシュ監督。ただ、話し合いのなかで自身のイメージとして、何本かの時代劇を伝えたという。
「彼女との話し合いの中で、イメージとして出てきた映画はいくつかあったよ。僕が大好きな三池崇監督の『十三人の刺客』(2010)とか、すごく残酷な映画なんだけど岡本喜八監督の『大菩薩峠』(1966)とかだね。参考までにそういった映画のことを伝えた。実際に観てくれたかどうかはわからないし、彼女がどんな準備をしたのかはわからないけど、結果として素晴らしい演技を見せてくれたと思うね」
また、仏像が鎮座するゼルダの畳部屋も絶大なインパクト。『オーシャンズ8』(2018)などのプロダクションデザイナーのアレックス・ディジェルランドが手がけたもので、その出来栄えには監督も「アレックスや衣装デザイナー、アート部門全体が素晴らしいアイデアを出してくれたんだ」と満足げだ。
ジャームッシュ監督が「もともとコメディ映画として作った」という本作だけに、カイロ・レン役のアダム・ドライヴァーのアイデアによる『スター・ウォーズ』ジョークなど、数多く仕込まれた小ネタも見どころになりそうだ。「そういえば、映画に出てくる仏像や畳は、使い終わった後に、ニューヨークの少林寺に寄付したんだよね。だから大喜びされたよ(笑)」(編集部・入倉功一)
映画『デッド・ドント・ダイ』は近日公開