劇場版『ポケモン』が長年愛されるワケ
劇場版ポケットモンスターは、1998年に公開された第1作目の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を皮切りに、2018年には20周年を迎え、幅広い層に愛されています。なぜ長きにわたり国民的映画であり続けることができたのか、その理由をさぐってみました。(川上大典)
ポケモン映画といえば「伝説や幻のポケモン」。ゲームではミュウが最初の幻のポケモンでしたが、劇場版でもそれは健在で、ミュウツー、ルギア、エンテイ、セレビィ、ラティアスとラティオスなど、魅力的な伝説・幻のポケモンが数多く登場しています。こうしたレアなキャラクターたちを大きなスクリーンで観られることも、ポケモン映画の醍醐味となっています。ただ、『劇場版ポケットモンスター/アドバンスジェネレーション ミュウと波導の勇者 ルカリオ』(2005)に登場したルカリオは、伝説のポケモンではありません。
それから、ポケモン映画はキャラクターのかわいさや、熱いバトルだけではなく、映像美や、友情や成長・愛・環境問題など、普遍的なテーマ性を持った作品が多いのも特徴的です。遺伝子操作や反転世界など、現代でも新しいテーマを初期の段階から取り入れていて、大人が観ても考えさせられるような作品の深さが、時代を超えて愛されている理由の一つなのかもしれません。
主題歌も魅力的なものが多く、藤井フミヤや、安室奈美恵、PUFFY、ポルノグラフィティ、Every Little Thing、いきものがかりなど、数多くの有名アーティストが主題歌を歌っています。小林幸子の「風といっしょに」を聞いたことがある大人は、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』(2019)を観て、当時を懐かしく思うかもしれません。同作は深いテーマ性があり、大人になってからまた観ると、観え方や考え方が変わったという人もいるようです。
そのように、大人から子どもまで一緒に楽しめる作品、それがポケモン映画ではないでしょうか。自分が子どもだった頃に観たポケモン映画がまだ続いていて、自分の子どもと一緒に観ることができるという幸せを味わうことができ、愛や感動を共有できる。ポケモン映画にはそんな、長年続いているブランドという安心感や安定感があります。
そんなポケモン映画の最新作『劇場版ポケットモンスター ココ』(近日公開)には、ポケモンであるザルードに育てられた少年、ココが登場します。ココを育てたポケモンのザルードは、まだ人の手が及んでいない未開の地であるオコヤの森で、厳しい掟を守りながら暮らしています。育ての親であるザルードと、ココのことを思うと感動や葛藤必至ですね。キャッチコピーも「君に伝えたい。」という短いながらも強いもので、メッセージ性が感じられます。
同作では、『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』(2018)の矢嶋哲生が監督を務めています。そして、脚本はテレビアニメ初期の「ポケットモンスター」から関わっているベテランの冨岡淳広と、矢嶋監督が担当しています。自分のことをポケモンだと信じて疑わないココが、どのようになっていくのか。サトシやピカチュウたちと、どのように関わっていくのか、とても楽しみな作品です。