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若手きっての演技派!菅田将暉にシビれる映画8選

最新作『糸』より
最新作『糸』より - (C) 2020 映画『糸』製作委員会

 中島みゆきの名曲をモチーフにした近日公開の映画『』。平成という時代をベースに“めぐり逢い”をテーマにした本作で、誠実に人と向きあう純真な男・高橋漣を演じた俳優・菅田将暉(27)。これまで数多くの作品に出演し、個性的な役柄を演じてきた菅田が、どこにでもいるような市井の人を好演している。そんな『糸』のほか、どんな色にでも染まれる菅田のシビれるような魅力を感じることができる映画を紹介する。(文・磯部正和)

【写真】女装も似合っちゃう!

『あゝ、荒野』(2017)

 劇作家であり詩人の寺山修司の小説をモチーフに『二重生活』などの岸善幸監督が映画化。東京オリンピックが終わった2021年(実際は延期)の東京・新宿を舞台にし、母親に捨てられた過去を持つ新次と、吃音に悩み対人関係が苦手な建二が、ボクシングを通じて互いを認め合っていく姿が描かれる。新次を菅田が、建二を『息もできない』のヤン・イクチュンが演じる。岸監督の現場は、ワンカットの長回しを多用する。OKが出なければ何度も何度も同じシーンを長回しで撮影するため、俳優には役への理解力とブレない表現力が要求される。そんななか、ボクシングシーンをはじめ、ケンカ、濡れ場、無言の対峙などジリジリするような場面が次から次へとやってきて、前後篇合わせて5時間を超える長尺だが、菅田は時間を感じさせないほど立体的な人物像を作り上げている。本作で菅田は、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した。

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『帝一の國』(2017)

 日本を代表する名門・海帝高校で繰り広げられる生徒会長選挙戦を描いた本作。菅田は、海帝高校にトップの成績で入学し、生徒会長、そして総理大臣になり、自らの国を作り上げようともくろむ野心家・赤場帝一を演じる。選挙戦を繰り広げる生徒たちに、野村周平竹内涼真間宮祥太朗志尊淳千葉雄大ら、いまを時めく若手俳優たちが多数出演することでも注目を浴びていたが、マンガ原作でかなりデフォルメされたキャラクターにもかかわらず、しっかりと実写として成立させる菅田のバランス感覚のすごさを実感できる。特に父親役で出演した吉田鋼太郎とのハイテンションのやりとりは、コミカルでコントチックだが、しっかり世界観になじんでおり必見だ。

『共喰い』(2013)

 田中慎弥による芥川賞受賞作を、『サッド ヴァケイション』などの青山真治監督が映画化。昭和の終わりを舞台に、菅田は父の乱暴な性行為への嫌悪感と、自分にその血が流れていることへの恐怖に苛まれながら生活する高校生・遠馬を演じた。恐怖の存在となる父親を光石研、離れて暮らしている実の母を田中裕子という演技派俳優たちに囲まれた菅田は、血を抗えないものだと感じてしまい、怯えながら日々過ごす青年の機微を見事に表現している。菅田自身、本作が役者としての転機になったと話していたように、劇中、遠馬が抱える闇や、葛藤する姿は息苦しさを感じるほど圧倒的であり、菅田の言葉が実感できる作品だ。

『アルキメデスの大戦』(2019)

 第2次世界大戦開戦直前の日本帝国海軍で起きた戦艦大和建造に関する政治的抗争を描いた意欲作。菅田は、戦艦大和建造に反対する海軍少将・山本五十六(舘ひろし)に誘われ、推進派の数字のからくりを暴く天才数学者・櫂直にふんしている。戦争映画であるが、戦闘シーンはほぼなく、戦いは会議室で行われる。一見するとこぢんまりとした話になってしまいがちだが、櫂の良い意味での数字に対する変態性や、絶対に曲げないポリシーを、あざとくない程度に誇張することで、物語をダイナミックに見せてくれる。菅田の役へのアプローチ方法の的確さはもちろんだが、本作は前述した舘をはじめ、平山忠道役の田中泯、嶋田繁太郎役の橋爪功、永野修身役の國村隼、大角岑生役の小林克也など、ベテランの個性派俳優たちとのセッションも大注目だ。

『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)

 『宮本から君へ』の真利子哲也監督が手掛けた若者たちのたぎる思いをつづった群像劇。菅田は、ケンカに明け暮れる芦原泰良(柳楽優弥)に興味を抱く少年・北原裕也にふんしている。これまでも、負の感情を内在している役を演じることがあった菅田だが、裕也は飛び抜けたクズっぷりを発揮している。多くの人は、本作を観て裕也の人間性に嫌気をさすだろう。裏を返せば、得体の知れない恐ろしさを見せる泰良と対照的な存在として、器の小さな人間くさい役をリアルに表現しているといえるだろう。

『セトウツミ』(2016)

 関西に住む性格が正反対の男子高校生の瀬戸小吉と内海想が、河原でくだらない話をしているところを切り取った作品。瀬戸を菅田が、内海を池松壮亮が演じる。75分の上映時間のなか、ほぼ全編にわたって、瀬戸と内海が河原の石畳に座って会話をしているシーンが続く。それを飽きさせることなく持たせるためには、会話のテンポや間が非常に重要。その意味で菅田と池松のコンビネーションが絶妙だ。

 メガホンをとった大森立嗣監督からは「漫才にしないでくれ」という演出があったというが、この言葉通り、ボケとツッコミという役割はあったものの、やり過ぎ感は一切ない。とにかくナチュラルな会話が展開され、いい意味でBGM的な形で作品を楽しむことができる。『ディストラクション・ベイビーズ』から2か月足らずで公開された本作だが、その落差に驚かされる。菅田の関西弁が聞けるのも、この作品の魅力の一つだ。

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『海月姫』(2014)

 東村アキコの人気コミックを実写映画化した本作。菅田は、男子禁制のアパート天水館に出入りする女装をした男性・蔵之介を演じる。クラゲオタクの月海(現・のん)をはじめ、天水館に住むオタク女子集団「尼~ず」たちのキャラが濃すぎるため、どれだけやり過ぎても浮くことはないと思われるなか、菅田の女装という武器の使い方が絶妙。そこには「女装が似合ってしまう」というビジュアルの優位性があることはもちろんだが、蔵之介という役柄の理解度が高いからこそ“色モノ”にならない。いろいろなファッションで登場するが、どれも似合ってしまうところは、ある意味で奇跡的だ。

『糸』(2020)

 菅田演じる高橋漣は、平成元年に生まれ、北海道・上富良野で生まれ育つ。13歳のとき、葵(植原星空→小松菜奈)と運命的な出会いを果たしたものの、葵の家庭の事情で離ればなれになり、そこから偶然的な再会を果たしつつも、結ばれることなく別々の人生を歩む姿が描かれる。漣という人物について、プロデューサーは「どこにでもいる市井の人」というイメージがあったというが、まさに大自然のなか、菅田は、いま目の前にある出来事に真摯に向き合う純朴な青年を好演。どんな色にでも染まれる菅田だが、あらためてその実力を見せつけられる作品となった。

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