山崎賢人、ダメ男役でも光る演技力!『劇場』で演劇にすべてを捧げた不器用な青年に
数々の話題作に出演し、確かな演技力を見せる山崎賢人。まもなく公開を迎える『劇場』では、演劇にすべてを捧げながら実生活では周囲とうまく折り合いをつけられない不器用な青年という役どころに挑み、新たな顔を見せている。山崎ふんする永田の個性が伝わる劇中のエピソードを紹介する。
又吉直樹の同名小説を原作に、劇作家を目指す永田(山崎)と、彼を必死に支えようとする沙希(松岡茉優)の恋を描く『劇場』。監督を『世界の中心で、愛をさけぶ』『ナラタージュ』などの行定勲が務めた。無精ひげを生やすなどのルックスも新鮮で、憂いや苦悩を抱える一人の男を表現している山崎。3月に行われた完成記念のイベントでは「原作を読ませていただいたとき、絶対に永田という役をやりたい」と思ったことを明かしており、「永田の人間としてのダメさ、弱さ、愚かさに共感しました」と語っていた。
そんな永田は生活のすべてを演劇にかけている青年で、それ以外のことは恋人の沙希に頼り切っている。劇中でも数々の印象的な言動を見せているが、山崎の演技には確かな説得力がある。今回新たに公開された場面カットでも、その憂いのある表情を垣間見ることができる。
永田のダメ男ぶりを示すものとしては、劇中での「だから、俺はディズニーと勝負しているわけなんよね」というセリフ。これは沙希からディズニーランドに行きたいと言われた際に永田が言い放ったもので、自分は創作する側の人間であり、他人が作ったもので好きな人が楽しんでいるのは見ていられない、とのこと。沙希がクリント・イーストウッドのことを褒めても不機嫌になった永田だけに、お金がないのを誤魔化すためでなく、本心でもあるように見える。
また、必要以上に疲れたふりをして風呂に入る、ということも。沙希の家で暮らすようになった永田だが、仕事もせず生活費も払わない。夕方頃に起きて、散歩をしては、演劇のことだけに思いをめぐらしている。部屋に戻ると疲れたふりをして風呂に浸かり、本当に自分が仕事をしたような気分に浸る永田に、沙希は「お疲れさまです」とお茶を出してくれるのだった。
さらには「でもここ沙希ちゃんの家やし、他人の家の光熱費を払う理由がね……わからん」というセリフも。ここでは「少しでも油断すると生活やお金の話になりそうな気がするので、常に物憂げな表情を作っている」という永田のモノローグが入るのだが、山崎が繰り出す絶妙にとぼけたような言い回しによって、どこか憎めないキャラクターになっている。
そんな山崎の演技力を改めて確認することができる『劇場』。永田に共感を覚えるのか、それとも……? 行定監督も「美しいものと醜いものが映っている青春映画にしたい」と語っているように、さまざまな解釈を生むことになりそうだ。(編集部・大内啓輔)
映画『劇場』は7月17日より全国公開
Amazon Prime Video にて同日より配信