河瀬直美監督や映像集団の新鋭監督が選出!サンセバスチャン映画祭
スペイン・バスク地方で開催される第68回サンセバスチャン国際映画祭のコンペティション部門の第1弾がこの程発表され、日本から河瀬直美監督『朝が来る』(10月23日公開)と、佐藤快磨監督『泣く子はいねぇが』(11月20日公開)が選出された。同時にコロナ禍の影響を鑑み、上映本数を例年より削減し、一部のイベントをオンラインに切り替えるなどの縮小開催になることも発表された。
第1弾で発表されたコンペティション部門作品は6作品。うち河瀬監督『朝が来る』、フランソワ・オゾン監督『サマー・オブ85(英題) / Summer of 85』、トマス・ヴィンターベア監督『アナザー・ラウンド(英題) / Another Round』、シャルナス・バルタス監督『イン・ザ・ダスク(原題) / In The Dusk』、デア・クルムベガスヴィリ監督『ビギニング(原題) / Beginning』の5作が「カンヌ2020」レーベル付き作品だ。
コロナ禍の影響で今年のカンヌ国際映画祭は開催を見送り、セレクション作品のみを発表した。それが56作品に与えられた「カンヌ2020」だ。その発表の際、サンセバスチャン国際映画祭は今年は例外的に「カンヌ2020」の中からコンペティション作品を選び、お披露目の場を用意する考えがあることを示していたが、実行に移した形だ。
その中において、異彩を放つのが長編2作目にしてコンペティション部門入りを果たした佐藤快磨監督『泣く子はいねぇが』。同映画祭では長編監督作2作目までを対象としたニュー・ディレクターズ部門を設けているだけに、同じく初監督でメインコンペティション部門入りを果たしたジョージア出身のクルムベガスヴィリ監督共々、同映画祭の期待の大きさがうかがえる。
佐藤監督は1989年生まれ、秋田県出身。初の長編映画『ガンバレとかうるせぇ』(2014)がぴあフィルムフェスティバルのPFFアワードで映画ファン賞と観客賞をダブル受賞し、続いて第19回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門にも選ばれて注目された。翌年には文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015」に選ばれて、太賀(現・仲野太賀)&岸井ゆきの主演『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(2016)を発表した。
現在、佐藤監督は是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」に所属しており、『泣く子はいねぇが』には是枝監督が企画として携わっている。同作は佐藤監督の出身地・秋田の民族行事ナマハゲを通して、大人になりきれない主人公たすく(仲野太賀)の成長を描くもの。佐藤監督のオリジナル脚本で、編集も手掛けている。
映画祭自体は、徐々にコロナ禍が緩和されていくことに望みを託し、開催に向けて準備をしているという。ただし上映本数は例年より30%の削減。さらに地域の小学生を招待して行われる子供向け映画の上映や映画音楽コンサートといった大規模イベントは中止。1950年~1960年代の韓国映画のレトロスペクティブ(回顧上映)企画は来年への持ち越しを決定。また企画フォーラムやマスタークラスはオンラインでの開催に切り替えるという。
第68回サンセバスチャン国際映画祭は現地時間9月18日~26日開催。オープニング作品は、サンセバスチャンで撮影されたウディ・アレン監督『リフキンズ・フェスティバル(原題) / Rifkin's Festival』の世界初上映で幕を開ける。(取材・文:中山治美)