柳楽優弥、こだわり続ける“感覚”の芝居!
映画『闇金ウシジマくん Part2』の蝦沼(えびぬま)、『ディストラクション・ベイビーズ』の芦原、『ザ・ファブル』の小島など、これまでもクレイジーなキャラクターを演じてきた俳優・柳楽優弥。そんな彼が、また一つ強烈なキャラクターで怪演をみせた。映画『今日から俺は!!劇場版』で演じた北根壊高校の番長・柳鋭次だ。
柳は、狂暴・残虐・狡猾というワルの三拍子を兼ね備えた恐ろしい男。レギュラーメンバーでも「どんな手を使っても勝てばいい」という主人公・三橋(賀来賢人)や、開久高校のナンバー2で卑劣で非道な手を使う相良(磯村勇斗)ら、いわゆる卑怯なやり口の不良はいたが、柳はその上をいく男だ。
柳楽は「なかなかゲスで卑怯な男ですよね」と笑うと「ドラマは子どもにも人気があった作品だったので、ナイフで人を刺すような描写も、正直どこまでやったらいいのかというのはありました」と台本を読んだときの率直な感想を述べる。
そんななか、柳楽は「でも柳としてお芝居をする部分だけではなく、アクションシーンも半分ぐらいありました。アクションはしっかりと形を作るので、それ以外のところはあまり決め込まないで、現場での“感覚”に任せようと思って臨んだんです。結局、最後まで答えが出ないまま撮影が終わってしまいました」と苦笑いを浮かべる。
柳楽が本作で大切にしたという“感覚”。これこそ彼がこだわって演じている一つのテーマだという。「その場の感覚で演じることもあれば、役に対してしっかり考えて築き上げていく方法もあります。実は考えて準備をしていく方が、心は穏やかでいられます。その場の感覚って、結構賭けだし、対峙する相手によってはメチャクチャ喰らうこともある。しっかりと“揺らぐ”ことを大事にすることは勇気が必要です。でも僕は感覚でやる芝居ってすごく貴重だと思うし、そういうことがOKの現場があるなら、チャレンジしていきたいんです」
こうした芝居に対するストイックな取り組みは、多くの若手俳優から羨望の眼差しを向けられる。本作でもバチバチにやり合った磯村も柳楽との芝居を熱望していた。柳楽は「10代前半からいままで、いろいろな方に応援していただいてここまでやってこられた。そのいまの自分に若い子が『一緒に芝居をしたい』と言ってくれるのは、素直に嬉しいです。でも、恥ずかしいところもあるし、そんなに期待され過ぎちゃうとちょっと緊張しちゃいますよね」と照れ笑い。
柳楽&福田監督と言えば、テレビドラマ「アオイホノオ」の焔モユルや、映画『銀魂』シリーズの土方十四郎など、今作に負けず劣らず個性的なキャラを演じている。「これまでの福田監督作品では、どちらかというとコミカルな役柄だったのですが、柳はシリアスパートの人間。その意味で結構緊張感がありました。一方で、先ほども話しましたが、ヒールな役なので、あまり作り込まずに、その場の感覚で芝居ができたのは良かったです」
近年の柳楽は作家性の強い作品への出演が多い。そのことについて「僕は作家性の強い作品も、王道のエンターテインメント作品もどちらも好きなんです」と心情を吐露する。その意味で「人や作品との出会いって、狙ってできるものではないと思うんです。だからこそ、縁のあった作品は一つ一つ丁寧にやらなければいけない」と気を引き締める。
柳は極悪非道なキャラクターだが、ナイフを握ったシーンでは、柳楽ならではのユーモアも垣間見せる。「現場に入る前に、ダニー・トレホがウルヴァリン風にナイフを持ったら柳っぽくなるんじゃないかと思っていたんです」とイメージを明かす。柳楽が細かい部分までこだわった柳。タッグを組んだ栄信演じる大嶽との北根壊極悪コンビに注目だ。(取材・文:磯部正和)
『今日から俺は!!劇場版』は7月17日より全国公開