ADVERTISEMENT

女優・黒木瞳が映画を撮る理由 改めて気づいた新たな挑戦への情熱

3度目の監督挑戦を果たした女優の黒木瞳
3度目の監督挑戦を果たした女優の黒木瞳

 映画『十二単衣を着た悪魔』で、3度目の監督挑戦を果たした女優の黒木瞳内館牧子の原作小説で描かれるヒロインの「品性のある凛とした生きざま」をどうしても映像化したかったという黒木が、本作に懸けた並々ならぬ思いとともに、リスクを背負ってでも監督業に挑み続ける経緯を明かした。

フリーターのダメ男が源氏物語の世界にトリップ!『十二単衣を着た悪魔』予告編【動画】

 本作は、映画『プラダを着た悪魔』(2006)からヒントを得た内館の長編小説「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」を映画化したファンタジードラマ。フリーターのダメ男・伊藤雷(伊藤健太郎)が「源氏物語」の世界にトリップし、弘徽殿女御(三吉彩花)らとの出会いを通して成長する姿を描く。監督デビューを飾った『嫌な女』(2016)、短編映画『わかれうた』(2017)に続いて黒木がメガホンを取り、伊藤沙莉ラサール石井山村紅葉笹野高史などが脇を固める。

ADVERTISEMENT

周囲や夫の反対を押し切って監督挑戦

 日本アカデミー賞最優秀主演女優賞(『失楽園』)などの数々の賞に輝き、女優として確固たる地位を築き上げてきた黒木。そんな彼女がなぜ映画監督に挑戦するのか。そもそもの経緯を黒木はこう振り返る。「1作目の『嫌な女』の時は原作の映画化権を獲得して、(2009年のドラマ「ママさんバレーでつかまえて」でタッグを組んだ)西田征史さんと3年かけて脚本を作り上げました。なかなか実現できず暗礁に乗り上げていたんです。そんな時に松竹さんから声をかけていただきました。作品を一番理解しているわたしが『監督すること』はどうか、と」

十二単衣を着た悪魔
(C) 2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

 当然、周囲からは猛反対を受けた。「今さらそんなリスクを背負わなくてもいいんじゃない? と夫や周りのみんなから反対されましたし、わたし自身も正直、『いくらなんでも無謀では……』という気持ちでした。ところが、ある方から『今日と違う景色が見たかったら、一歩前に進んでみては?』という助言をいただき、真剣に自問自答してみたら、自分の中に『新たなことに挑戦してみたい』という情熱がまだまだあることに気づいたんです」。今作の劇中にも「身の丈以上のことをすることこそ人生」というセリフがあるが、監督への挑戦は、まさにそれを地で行く黒木の大きな決断だった。

ADVERTISEMENT

経験値が少ない弱みを“強み”に変えた

 そして、長編映画としては2作目の監督挑戦となった今作。流れの中でメガホンを取った前作とは違い、今回は黒木の前向きな熱量によって実現した。「内館さんが描く理想の女性像の中でも弘徽殿は最高峰。品性のある凛とした生きざまが実に魅力的で……。一人の女性として『映像化したものをどうしても観たい!』という思いが強くあったので、キノフィルムズさんにぶつけたら、快くOKしていただいて実現しました。描きたいものがあれば、女優でも監督でも目指すものは同じ。前作と違って今回は、最初から監督も視野に入れて企画を進めていたので、躊躇(ちゅうちょ)なくメガホンを取ることができました」

十二単衣を着た悪魔
(C) 2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー

 自身の殻を打ち破り、意欲的に取り組んだ今回の監督業。「その重責は十分に実感している」という黒木。「作品が悪ければ全て監督の責任、よければ役者のおかげ。そこは変わらないので、とにかく命懸けで現場に臨まなければ、という思いでいっぱいでした」と振り返る。ただ一つ、大きく変わったのが作品の肝となるスタッフィング。今回、黒木と仕事をともにしたことのある精鋭たちが彼女のために結集した。

ADVERTISEMENT

「分かり合えるからこそのメリットはありました。例えばわたしの場合、経験値が少ない分、好き勝手なことを言えるという強みがあるので(笑)、大胆なアイデアを出して、それに対して彼らプロの適切なアドバイスをいただいて具現化する。屋根のない金色に輝く『絵巻』のような宮中セットは、まさに最たるもの。スタッフとの連携で素晴らしい映画美術を生み出したと自負しています」

黒木監督が考える理想の配役が実現

 現代のネガティブ男子・雷が「源氏物語」の世界にタイムスリップし、陰陽師として仕えることになる桐壺帝の正妃・弘徽殿女御役に抜てきされたのが三吉。今回、黒木が最も描きたかった理想の女性像を見事に体現している。「十二単衣を着せたら右に出るものはいない」と手放しで絶賛する黒木は、三吉の凛とした美しさをさらに引き出すために、マンツーマンで厳しく指導したと述懐する。

 「弘徽殿のイメージを伝えたり、時代劇特有のお芝居のノウハウを教えたり、セリフのキャッチボールをしたり、とにかく嫌われるのではないか、と思うくらい指導させていただいたのですが、彼女はめげずに食らいついてきてくれました。最終的にはわたしを遥かに越えて、自分なりの弘徽殿像を作り上げてくれたので、ぜひその美しさを劇場で体感していただきたいですね」

 若い人には負ければいい。時代はつねに動いている。それが女性の品性というもの……。若手俳優たちの素晴らしさを手放しで称える黒木の横顔に、弘徽殿女御の生きざまが重なって見えた。(取材・文:坂田正樹)

映画『十二単衣を着た悪魔』は全国公開中

伊藤健太郎が源氏物語の世界にトリップ!『十二単衣を着た悪魔』予告編 » 動画の詳細
  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT