なんでもできる森川葵「諦めないこと」を楽しむ素顔

　人気バラエティー番組「それって!?実際どうなの課」で、テーブルクロス引きをはじめとするスゴ技を次々とマスターし、話題を呼んでいる森川葵。そんな森川が、テレビアニメ「おジャ魔女どれみ」シリーズの20周年記念作品『魔女見習いをさがして』（11月13日公開）のヒロインのひとりとして声優を務めた。周囲から、“見習い”レベルを難なく越えてきたように思われがちだという森川は、「なんでもできていいねって言っていただくことが多いのですが……自分のなかでは毎回かなり頑張ってやってるんです」と挑戦への本音を語った。

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「大丈夫か、私!?」を乗り越えるのが楽しい

　映画は、テレビアニメシリーズのオリジナルスタッフである佐藤順一監督、脚本の栗山緑、総作画監督の馬越嘉彦らが再集結した完全新作。「おジャ魔女どれみ」を観て育った3人のヒロインが巡り会い旅に出かけるという、大人のための新たな魔法の物語だ。森川は、周りの意見に流されがちで、自分を表現することが苦手な大学4年生・長瀬ソラの声を演じている。

　声優としての出演オファーが来た際、大好きな作品だからこそ、台無しにしたくないという気持ちがあったという森川。だが「自分に声優が務まるかどうかはわからなかったけど、やってみなければわからないことも多いと思ったんです。だったらまずは、とにかくやってみようと思って」と笑顔で語る。

　そのポジティブなチャレンジ精神こそが、数々のスゴ技誕生の秘訣なのだとか。「バラエティー番組では、『何としてでもやり遂げなければ』っていう焦りやプレッシャーではなく、『何事もやってみよう！』といういい意味での気軽さをもってチャレンジしています。だからいつも楽しんでやれるんです」。

　もちろん、やることになった以上は真面目に教わり練習もするが、何よりも大事なのは「もうできない！　って諦めないこと」だと語る。あともう一歩なのに……という一番気持ちが焦りがちなときも「『あれ？　できそうじゃん、いけるじゃん私！』って自分を高めながらやるようにしています」とどこまでも楽しそうだ。

　本作のヒロインたちは、大人になった自分にとっての魔法を見つける。森川にとっての魔法は「諦めないこと」だと即答。「諦めてよかったことなんてないですし、自分も気持ちよくないから、だったら頑張りたいんです。そのために集中して、できるまで諦めずにやり通せるところは、私なりの魔法だと思います」と語る。「どんどん挑戦するハードルが上がってきて、そのたびに『大丈夫か、私!?』って思うんですが、でもそれを乗り越えるのが楽しいんです」。

三浦翔平と演じた、繊細な距離感

　森川の明るい情熱と、佐藤監督の丁寧なディレクション力は相性が良かったのかもしれない。アフレコ中は「できているのか、できていないのかすらずっとわからないままだった」という森川の心に火をつけるように、監督は的確な指示や芝居の感想を送り続けた。「監督が常に声をかけてくださったので、なんとか演じ切ることができました。ソラがお酒で酔っ払っているシーンを演じたときは、ブースの向こうでスタッフさんたちが拍手してくださったり、『ぐうの音も出ません』とまで言ってくださったりしたことが、自信につながりました」。

　酔っ払うシーンを演じた後は、「もうなんでもできる！　って無双モードに入っていました（笑）」という。「ソラは、大人しそうに見えて実は一番感情が顔に出やすいタイプなんです。だから控えめに演じることよりも、ソラのかわいい部分がもっと出せたらいいなと思って、完成したアニメを想像しながら演じていきました」。

　三浦翔平演じる、おんぷちゃん推しの大学生・大宮と出会ったことで、ソラの感情は大きく揺さぶられることになる。「大宮さんとのシーンは、（ヒロインの）ミレやレイカと3人でいたときとはちょっと違うソラの一面が出る、とても重要な場面なんです」。ところが当初は別日に収録していたため、全然うまくいかなかったそう。後日、改めて三浦と一緒にアフレコできることになり、なんとか無事に演じきることができた。「相手がいる状態でのお芝居は普段からやってきたので、お互いに細かく打ち合わせなくても、相手のお芝居に合わせて自然に返すことができました」。とても繊細な距離感で描かれているソラと大宮のシーンにも注目だ。

「私はまだまだ、極めてない」

　15歳でモデルとしてデビューし、すでに芸歴10年目の森川。だが、周りの意見に流されがちなソラのように、意外にも自分の将来に悩んだ経験があるという。「友だちが就活するタイミングで、ものすごく真剣に悩んでいて。それを見ていたら、自分がこのまま役者の仕事を続けていくことが正解なのかどうか、わからなくなってしまったんです」。それは、若くしてひとつの道を長く歩み続けてきた者だからこその迷いかもしれない。

　そのとき森川はこう思ったという。「私はまだまだ、極めてない。もしそこで新しいことをゼロから始めていたら楽しいだろうし、幅も広がるかもしれない。でも『じゃあいままでの経験値を捨ててもいいの？』って考えたときに、ずっと歩んできたこの道だって、もっともっと極められることに気づいたんです。このまま進み続ければ、見えてくる世界は絶対に広がるし、役者にゴールなんてないんだなって思えたんです」。やはり、森川の魔法は「諦めないこと」だったのだ。

　経験値を自身の大きな強みに変えて、演技の道を進むことを選べたからこそ、「こうして大好きな作品の声の芝居に挑戦させていただくことができました」と心から喜ぶ森川。「でもまだまだ経験したことのないことばかり。だから役者は、やりがいがあります。続けてきてよかったです」。

　“なんでもできるキャラ”ではなく、諦めないことをとことん楽しめる森川葵。彼女が大好きな作品で挑戦した声の芝居が、中途半端であるはずがない。（実川瑞穂）