愛する母のために!『女優 原田ヒサ子』念願の舞台挨拶に原田美枝子らファミリー集結
映画『女優 原田ヒサ子』の舞台挨拶が28日に立川シネマシティで行われ、監督を務めた女優の原田美枝子を筆頭に、長女でシンガーソングライターの優河、次女で女優の石橋静河、長男でVFXアーティストの石橋大河、大河の妻である石橋エマニュエルといった原田家メンバーが集結した。
本作は当初、3月28日に一家勢揃いの舞台挨拶が予定されていたが、新型コロナウイルス対策として、東京都が週末の外出自粛を要請したことにより、上映館だったユーロスペースは週末休館。舞台挨拶も中止となってしまった。その後、3月30日から上映が始まったものの、コロナ禍ということもあり、変則的な上映を余儀なくされていた。上映期間が一旦終了した後も、観客から再上映を望む声が多数寄せられていたこともあり、今回、東京地区での再上映が決定。あわせて、監督念願の舞台挨拶も行われる運びとなった。
ほぼ満席の客席を見渡した原田監督は、「短い作品なので、これを映画館でかけてもらえるんだろうかと思っていましたが、今日はたくさんの方に来ていただいて、とてもうれしいです。ありがとうございます」と感無量の表情を浮かべる。
本作は、原田監督の実母・原田ヒサ子さんを追ったドキュメンタリー映画。認知症となったヒサ子さんは、女優である娘の人生を、まるで自分のことのように語るようになる。母の中に女優として生きてみたかったのではないかと感じた原田監督は、「ヒサ子さんを映画の被写体としてスクリーンに登場させれば、ヒサ子さんの言葉は現実のものとなる」という思いで映画を完成させたという。
原田監督が女優業に打ち込むためには、母・ヒサ子さんの協力が不可欠だった。「母のおかげでこの方々(子供たち)が無事に育った。わたしたちが母をもり立てるために作業をするのは意味があることかもしれないと思って、彼らに声をかけたら賛同してくれて。それでこの作品が生まれました」と企画の経緯を語った。
家族は出演者であると同時に、静河が助監督、大河が予告編制作・録音、優河が挿入歌を担当するなど、スタッフとしても参加。ドラマ「この恋あたためますか」の撮影の合間に駆けつけたという静河は、「わたしは助監督としてカチンコを打ちました。普段はそれをやってもらっている側ですが、作る側の感覚をちょっとでも知ることができて良かったなという気持ちがあります」と語ると、「家族って距離が近いので、客観的にどういう人なんだろうと思う機会があまりないと思うんです。それをこの経験を通して、一人の素敵な人間としておばあちゃんを捉えることができて。それは何事にも代え難い体験だったなと思います」と笑顔。優河も「おばあちゃんは宇宙一おいしいハンバーグを作る方。いろんな気持ちが入ったものを食べてきたんで、おばあちゃんを尊敬していますし、画面の中でも愛おしくて、素敵な人だなと今でも思っています」と振り返った。
ヒサ子さんは本作を鑑賞したそうで、原田監督は「全体的に何を語っているのかはわからなかったようですが、ポスターの写真は、しわがないと言って気に入ってくれました。大好きな着物でいい写真を撮ってもらえましたからね」と嬉しそうな表情。さらに、「もう一つの夢は、原田ヒサ子さんに初日舞台挨拶をさせてあげたいということです」と続けると、「ただ、コロナ禍で映画館にお客様をたくさん呼ぶこともできなかったし、母自身も外出も面会もできなくなったので。万が一、母が元気になって、映画館の状況も良くなったら、どこかで母の舞台挨拶ができたらいいなと思っています。今日(劇場から)いただいたお花を母に捧げたいですし、みなさんがこんなにたくさん来てくれたんだよと母に伝えたいです」と改めてその思いを語った。(取材・文:壬生智裕)
映画『女優 原田ヒサ子』は12月4日まで立川シネマシティにて上映、12月5日よりシネマ・ジャク&ベティにて上映予定