「おちょやん」トータス松本、ダメ親父のテルヲは「死ぬ時ぐらいは良い人間で…」
連続テレビ小説「おちょやん」(月~土、NHK総合・午前8時~ほか)で、ヒロインの父親である竹井テルヲを演じているトータス松本が、初めての朝ドラ出演や役への率直な思いなどを語った。
杉咲花がヒロインを演じる「おちょやん」は、大阪の南河内の貧しい家に生まれた竹井千代が女優を目指して奮闘していく姿を追う物語。松本ふんするテルヲはトラブルメーカーの父親だが、千代にとっては憎むに憎めないところもある。
昨年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」にも出演するなど、俳優としても活躍している松本だが、連続テレビ小説への出演は今回が初めて。「朝ドラに出演するとは思ってもみなかったので、正直に言えばちゅうちょしました。朝ドラは、家族全員で毎朝日課のように観ているもので大河ドラマとはまた違いますよね。イメージがまったくわかなかったです。そのなかに自分がいるのが想像できない(笑)。撮影が始まってからも、不思議に思いながら演じていますね(笑)」と本音を明かす。
松本が演じるテルヲは鶏の世話や家事を千代に丸投げする、絵に描いたようなダメ父親。そのテルヲについては「ひどいお父さんですよ(笑)。台本を読んでいても、この人はいったい何を考えているのだろうと。だらしなくて、どうしようもない。ぼくらは生きていくなかで、家族に対する愛情とか世間体、恩や義理など人との調和を考えていきますが、テルヲはそういうことをあまり考えたことがない人なんでしょうね」と述べる。
劇中では、鶏の流星丸を大事にするテルヲに千代が「どっちが大事やねん!」と腹を立てると「そねなもん決まっとるやないけ……流星丸や」と即答する一幕も。「ふだんの自分だったら絶対出てこない言葉なので、こんなこと言って知らんぞーとやきもきするけれど、言い切るテルヲが羨ましくもありますね(笑)。思っていたとしても100%は言えないじゃないですか。それを言い切る。それがちょっと気持ち良かったりもします」
そんなテルヲだが、松本が最初に言われたのは「『おしん』の伊東四朗さんが演じた作造さんのような、“西の作造さん”になってくれませんか?」という言葉だった。「小作農家の作造さんは、一生懸命家族のために働いても働いても報われず、貧乏な暮らしに耐えきれず、娘を奉公に出すことになって……。なにも悪いことしてない、ひたむきに家族のために働いているだけなのに。かたやテルヲって……。完全にテルヲが悪いだけですよ。おまえがちゃんとすればいいんじゃ! 作造さんとまったく比較にならないですよ、情けないですね、話が違う」と笑う。
「テルヲが今後だらしなくてどうしようもない父親のままなのか、それとも最後は少しぐらい良い人間になるのか。死ぬ時ぐらいは良い人間でいたいなあと思っていますが、予定調和すぎますかね(笑)。テルヲのこれからを温かく見守ってください」
また、子役も含めて共演者には「リスペクトしかない」という松本。「8歳ぐらいの人生経験でも、あれだけの演技ができるというのは、ぼくには想像ができないですよね。ぼくはバンドマンですからね、ぜんぜん違う分野からきているから。子役の彼女がこれだけやるんだから、ぼくはとにかく受けて立つという気構えでおろうと思って撮影現場に入っていました」
これからヒロインの千代を演じることになる杉咲とは、ともに「いだてん」に出演したが、共演は2012年放送のドラマ「家族のうた」以来となる。「その後、いろんなドラマに出演されて、めきめき頭角をあらわし、すごい女優さんになったなぁと感心しきりです。なんか親戚の娘さんの成長を見ているような感じですよね」と思いを語った。(編集部・大内啓輔)