城桧吏『約束のネバーランド』で得たメンタルの大切さ!「ずっと俳優を続けていきたい」
第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』で、リリー・フランキー演じる主人公の息子・祥太として存在感を示した城桧吏。その撮影当時は小学生だった城も、現在14歳の中学2年生。学生生活を送りながら、俳優としても着実に経験を重ねている。最新作『約束のネバーランド』(12月18日公開)では、施設から決死の脱出に挑む子供たちの頭脳となる少年・レイを演じた。メガホンを取った平川雄一朗監督から厳しく指導されたという撮影現場で城はどんなことを得たのだろうか。
『約束のネバーランド』の原作となる漫画は、2016年から週刊少年ジャンプで連載されると人気を博し、コミックスは累計で2,500万部を突破。テレビアニメ化もされるなど、非常に注目度の高い作品だ。しかも城演じるレイは、理知的で常に大人の視線を持っているキャラクター。「ファンが多い作品なので、しっかり納得してもらえるのか、そして常に冷静で大人びているレイは僕とは違った性格なので、自分が演じ切ることができるのかという緊張とプレッシャーがすごくありました」と撮影前に感じた不安を明かす。
いままで感じることがなかったような大きな重圧。そのプレッシャーを解消するために、平川監督と共にクランクインの前から、じっくりとリハーサルを繰り返した。セリフの練習はもちろん、表情の作り方や、大人びた雰囲気を体感するために『スタンド・バイ・ミー』や『クローズZERO』シリーズなどの映画を観たという。
城が一番強く感じたことがメンタルの大切さ。「リハーサルのときは平川監督と相撲をしました。監督には『力では絶対俺のことは止められない。でも感情で止めてみろ』と言われました。身体も小さいし、力が弱くても、気持ちで臨むことで強くなれる。これはお芝居をするうえでも、すごく大事なことだと実感できました」。
劇中、15歳という設定のキャラクターを演じた城。共に施設から脱出する同い年のエマ役・浜辺美波は撮影時19歳、ノーマンを演じた板垣李光人も17歳と、城よりも年上だった。しかし浜辺は「目線を下げるのではなく、城くんに上げてもらいたかった」と話していたように、臆することなく堂々としていることが、役づくりの肝になる。
その意味で、平川監督とのリハーサルが大いに役立った。城は「作品を観たとき、自分ではないような表情や余裕が出ているなと思いました」とメンタルを鍛えたことの成果が感じられたことに胸をなでおろす。エマを演じた浜辺と対峙するシーンも「演技がすごく、引いてしまいそうな場面がたくさんあったのですが、『絶対負けないぞ』という気持ちでなんとか踏ん張りました」と撮影を振り返る。
『万引き家族』で大きな注目を浴びた城。その後、大河ドラマなど多くのドラマも経験した。「撮影現場でほかの俳優さんがどんなお芝居をしているのかを拝見したり、映画やドラマを観ているとき『この俳優さんはどんな気持ちなんだろう』などと考えたりするようになりました」と作品を観る意識も変わってきたという。さらに、物事への考え方や感じ方も変化した。会話のなかでも「この人はどういう気持ちで話しているんだろう」と人への探求心も強くなった。
“演じる”ということへの意識は、日常生活のなかでも確実に高くなった。しかし一方で、周囲の環境に大きな変化はないという。「周りの友達がいままで通りに接してくれるんです。仕事のことを聞いてくる子もいないので、学生生活を普通に送ることができています」と感謝を述べていた。
人気の高い原作漫画の実写映画化でメインキャストを務めた本作。撮影前に抱いた大きなプレッシャーを乗り越え、いよいよ劇場公開を迎えた。「とても充実した日々でした」と笑顔を見せた城に10年後の自分がどうなっているか問うと「ずっと俳優を続けていきたいと改めて思えた作品。きっと俳優をやっていると思います」と強い視線で語った。(取材・文・撮影:磯部正和)