白石和彌監督『孤狼の血II』クランクイン前にハラスメント対策のリスペクト・トレーニングを実施!
白石和彌監督が再びメガホンをとる映画『孤狼の血II』(仮)のクランクイン前、スタッフやキャストに向けたリスペクト・トレーニングがリモートで開催され、いまだにセクハラやパワハラなど悪しき慣習が残っている日本映画の撮影現場改革に白石監督自ら乗り出した。
講習は約1時間に及び、参加した約50名のスタッフやキャストに向け、どんな言動や行動が「パワーハラスメント」や「セクシュアルハラスメント」につながるか、実際に撮影現場でハラスメント行為が発生した場合の対処方法などが解説された。撮影中は「自分がハラスメントを受けている」「誰かがハラスメントを受けているのを目撃した」場合に電話をかけるためのホットラインも開設され、「何かあった時、第三者に相談をする、報告をする」ことが「当たり前」になるようスタッフ一同に伝えられた。
多数の企業でハラスメント対策をサポートしてきたピースマインド株式会社によるリスペクト・トレーニングは、監督自ら「クランクイン前に全員で勉強したい」と東映に提案して実現。現在日本では、Netflix製作の作品で実施されており、日本の映画スタジオでは初めての試みとなった。
また男性が多い撮影現場でセクハラを受けやすい立場にある女性スタッフから、男性スタッフとの飲み会で「胸のカップを当てさせろ」と胸を触られたことがあるという体験談が上がると講師が「その場の空気で冗談のように流されたかもしれないが、実際には犯罪にもなりうるケース」と話し、飲み会におけるセクハラについても言及された。
講習後に行われたマスコミによる囲み取材で、白石監督は、ハラスメントという言葉が定着している今もなお、撮影現場で先輩が後輩を怒鳴る、殴る、蹴るなどのハラスメント行為が残っている日本の映画業界が背負う今後の課題について言及。助監督としてのキャリアも長い白石監督も、これまで多くの現場でハラスメント行為を体験してきたという。「それでよしとされていた時代もあったし自分の時代もそうだったけど、今はもう時代が違う」と力を込める。
ハラスメント行為に対しての法案が出され、法律が施行しているにも関わらず、未だに撮影現場でのハラスメント行為が起きてしまう理由について記者から質問が挙がると、「上下関係ですかね? 基本フリーで、約束で仕事を貰うみたいなところがあると思うのでそこで下手にハラスメントを告発するなどしたら次に繋がらなくなってしまうことが多い。だからこそ黙ってしまうし、今までハラスメントを受けてきた方たちもたくさんいらっしゃるので、連鎖を断ち切るということが重要かなと思っています。それに、日本の映画界って貧しくて、とにかく時間がない。撮れなかったら現場の責任・監督の責任みたいになってしまうというのも問題だと思います」といくつかの問題点を挙げた。
今なお、現場に暴力や暴言が残っており、「愛のしごき」などという人もいる。まるで戦時中のようなことが残っているのは日本映画界にとって非常に恥ずかしいことだ。ハラスメントを受けてきた白石監督だからこそ感じている「今変えねば」という思いは、日本映画を少しずつ変えていく第一歩となるだろう。(森田真帆)