常盤貴子ら大林宣彦監督の思いを胸に…「尾道映画祭」開幕!
2020年4月10日に逝去した大林宣彦監督の追悼をテーマに掲げた「第4回 尾道映画祭2021」オープニングセレモニーが27日、広島県尾道市のしまなみ交流館で行われ、大林宣彦監督夫人で映画プロデューサーの大林恭子、そして晩年の大林作品の常連となった常盤貴子らがリモートでゲスト出演した。
『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』といった大林監督の尾道三部作や、小津安二郎監督の『東京物語』の舞台となったことでも知られる「映画の街・尾道」で開催される本映画祭。今年は2月27日、28日の2日間にわたって、検温・消毒・換気・人数制限・来場者記録など感染予防を施した上で開催されることとなった。
オープニング作品となる『海辺の映画館-キネマの玉手箱』の上映前にはオープニングセレモニーを実施し、同作のヒロインで山口県下関市在住の吉田玲が参加。そして大林宣彦監督夫人でプロデューサーの大林恭子、娘の大林千茱萸、そして『海辺の映画館-キネマの玉手箱』キャストの厚木拓郎、細山田隆人、常盤貴子、アンカーを務める映画作家の安藤紘平がリモートで参加することとなった。
セレモニーでは、音楽を愛した大林監督をしのび、広島交響楽団の団員らによる生演奏が行われた。映画『転校生』でも印象的に使われていた「アンダンテ・カンタービレ」「トロイメライ」「タイスの瞑想曲」といったクラシック曲を弦楽四重奏で演奏後、ソプラノを加え、映画『ふたり』の楽曲「草の想い」(作詞:大林宣彦/作曲:久石譲)を披露。一気に会場を大林作品の世界に包み込んだ。
続いて、大林監督と60年以上にわたって映画作りに駆け抜けてきた恭子夫人のメッセージが司会者より読み上げられた。そこには、大林監督が闘病生活を送る中で、遺作となった『海辺の映画館-キネマの玉手箱』を自宅から10分の距離にある東宝撮影所で撮影するべきか、それとも尾道ロケをするべきかというプロデューサーとしての、そして夫人としての苦悩がつづられており、「最後の尾道、本当に良かったのかしら。ええ、本当に良かったのです」とかみ締めるような言葉で締めくくられていた。
その後は恭子夫人もふくめた、リモートで参加するゲストたちがあいさつ。「お久しぶりです、皆さま」と呼びかけた常盤は、「本来なら尾道にうかがって、皆さんの前でごあいさつさせていただく予定だったんですが、こういう時期なので」と無念さをかみ締めつつも、「ちゃんと時間がたって。落ちついて。みんなが心配なく集まれるようになったら、そこでまた新たに『帰ってきた大林宣彦的な映画祭』を開催していただきたい」とメッセージ。
さらに「大林監督の映画は、思いはそこに存在するということが描かれているじゃないですか。だから体は離れていても大丈夫です。大林監督のイズムで私たちはいつでも集まることができます。楽しんで映画祭を過ごしていきましょう」と呼びかけた。
最後には本映画祭から、大林宣彦監督、大林恭子プロデューサーに向けた感謝状を授与することに。花束ゲストとして登場したのは尾道市在住の少年トキオくんとカケルくん。『時をかける少女』を想起させるその名前を聞いた常盤たちは画面越しに「すごい!」「かわいい!」と大盛り上がり。恭子プロデューサーも「とてもビックリしました。思いがけない賞をいただき、ありがとうございます」と感謝の思いを述べていた。
今年の尾道映画祭は、大林監督への追悼と感謝の思いを込めて、広島県尾道市のしまなみ交流館で開催。遺作となった『海辺の映画館-キネマの玉手箱』をはじめ、『転校生』の尾道ロケから40周年を記念して「尾道三部作」を尾道では初めて連続上映することになる。(取材・文:壬生智裕)