綾瀬はるか、常識を裏切るアクション女優としての輝き
ほんわかとした独特の雰囲気で老若男女問わず幅広い世代から人気の綾瀬はるか。女優デビューから20年近くが経過するが、近年“動ける女優”としてそのポテンシャルを存分に発揮し、最新作『奥様は、取り扱い注意』では連続ドラマ以上に激しいアクションを披露している。年を重ねるごとに進化する綾瀬が、その原動力について語った。
2017年の10月クールに連続ドラマとして放送された「奥様は、取り扱い注意」(日本テレビ系)。本作で綾瀬は、普段は平凡な主婦ながら、問題が起きると恐るべき身体能力を発揮し相手を倒してしまう女性・伊佐山菜美を演じた。菜美は、ある国の特殊工作員として暗躍していた過去を持ち、アクションシーンもかなり迫力があるものだった。
また、ほぼ同時期に放送された大河ファンタジー「精霊の守り人」(NHK)でも、綾瀬は男勝りに活躍する主人公・バルサを演じ、ハードなアクションシーンを披露。これまで女性らしい役が多かった綾瀬の活動的な姿や、高い身体能力など、新たな一面に驚く視聴者も多かった。
もともと綾瀬と仕事を共にした製作陣は、彼女の身体能力の高さに言及することは多かったが、「奥様は、取り扱い注意」「精霊の守り人」のどちらも30歳を過ぎてからの撮影だった。綾瀬は「以前ドラマでご一緒した佐藤健くんも『るろうに剣心』シリーズなどをやっているので『身体動く?』って聞いたことがあったんです。健くんも『やっぱり20代じゃないと(きつい)』と言っていたので『やっぱりそうだよな~』と心のどこかではあるんです」と胸の内を明かす。
それでも綾瀬は「海外の作品では、30代の女優さんでもバリバリアクションをこなしている人ってたくさんいますよね。しかもお芝居の経験を積んできたからこそ、力強さや機敏さなど、若いころとは違った表現力も出せると思うんです」と30歳を超えてアクションを披露することのメリットをあげる。
綾瀬の言葉通り、劇場版『奥様は、取り扱い注意』には、息をのむような激しいアクションシーンがあるが、ただの格闘シーンではなく、しっかりと人物の思いや葛藤が伝わる。アクションのなかに感情が込められているので、より感情移入がしやすい。
20代で王道のラブストーリーのヒロインを演じることが多かった女優が、30歳を過ぎてハードなアクションをバリバリこなす姿は、ある意味で常識に反しているように感じられるが「小さいころから体を動かすのが大好きで、この仕事をするようになってからもずっと、アクションはやりたいと思っていたのですが、なかなか機会がなくて……」と30代を迎えアクション女優さながらのオファーが来ることに喜びがあることを明かす。
しかし一方で「やっぱり体力的にはきついので、撮影が終わるとドッと疲れがきてしまうんです」と苦笑い。「正直、もうアクションはいいかな……っていつも撮影が終わると思うのですが、でも面白いアクションのお話があると興味が湧いてきます」と目を輝かせる。特に完成した作品を観ると「またやりたい!」とアドレナリンが出てしまうという。
過酷なアクションに挑んだ綾瀬。キレキレの動きプラス表現力で、さらなる女優としての可能性を提示している。(取材・文:磯部正和)
映画『奥様は、取り扱い注意』は全国公開中