第93回アカデミー賞ノミネート直前予想!注目は大量の配信作品&女性・有色人種監督の活躍
第93回アカデミー賞
第93回アカデミー賞のノミネーションが、現地時間15日に発表される。新型コロナウイルスの影響で、全米の大多数の映画館は昨年3月からクローズしたままで(お膝元のロサンゼルスではこの1年、映画館は一度も開いていない)、スタジオはこの間、作品の公開を延期したり、劇場公開を断念して作品をストリーミングサービスに売ったりしてきた。その結果、オスカーでも、今年はいつも以上に配信作品が活躍しそうだ。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)
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アカデミー賞の作品賞の予想は、全米プロデューサー組合賞(PGA)の結果を見るのが一番手っ取り早いと信じられてきた。しかし、「#OscarsSoWhite(白すぎるオスカー)」のバッシング以来、アカデミーは多様化を目指して外国人や若者、マイノリティの新会員を多数招待し、投票者の顔ぶれは以前と大きく違ってきている。昨年のオスカーで『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞したのも、その表れだ(PGAを受賞したのは『1917 命をかけた伝令』だった)。今のアカデミーには、他の賞の投票者と被らない会員が多いのである。
それでも、とりわけノミネーション段階ではPGA、全米監督組合賞(DGA)、全米映画俳優組合賞(SAG)は大きな参考になる。この三つともに候補入りしたのは、『ミナリ』『シカゴ7裁判』の2作品。二つに引っかかったのは、『ノマドランド』『Mank/マンク』『マ・レイニーのブラックボトム』『あの夜、マイアミで』『プロミシング・ヤング・ウーマン』だ。この7本は、オスカーノミネーションでも相当に期待が持てるといえるだろう。ところで、これらの作品のうち3本は女性監督、4本は黒人またはアジア系監督の作品だ。これはまさにアカデミーの進化を象徴する、喜ばしいことである。
他に可能性があるのは、つい最近の公開で投票者の記憶に新しい『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題) / Judas and the Black Messiah』と『ファーザー』。PGAにはサシャ・バロン・コーエン主演作『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』が入ったが(先月のゴールデン・グローブ賞ではコメディまたはミュージカル部門で作品賞を受賞している)、オスカーはさすがにやや敷居が高いかと思われる。また、『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』『ザ・ファイブ・ブラッズ』『この茫漠たる荒野で』にも希望があるし、批評家の間で高く評価されているピクサーの『ソウルフル・ワールド』は長編アニメ部門だけでなく、作品部門にも食い込んでくるかもしれない。
上記のうち、Netflix配信作は5本、Amazonプライム・ビデオ配信作は3本、Disney+は1本。これらはすでに日本でも配信されており、『ミナリ』は今月19日、『ノマドランド』は今月26日に日本で劇場公開になる。日本で観られる作品が多いことで、日本の映画ファンにとっては楽しみな授賞式になるのではないだろうか。しかし、アメリカの視聴者にとっても同じかどうかは微妙なところだ。昨年のエミー賞中継番組は史上最悪の視聴率で、先月のゴールデン・グローブ賞中継番組の視聴者数も前年に比べて60%以上もダウンしているのである。授賞式がバーチャルで行われるため、華やかなレッドカーペットがないことも要因かもしれないが、コロナをはじめとする深刻なニュースが多い中、ハリウッドの賞に対する関心が薄れていることも考えられる。
そうでなくても、オスカー授賞式番組は、長い間苦戦してきた。アワードシーズンで最も重要な賞であり、スターが勢ぞろいする大事な祭典ではあるが、長すぎる、新鮮さがないという批判は、毎年のように聞かれてきている。そんな中で、さらに困難のある今年の授賞式を、プロデューサーたちはどうやって面白くするのだろうか。どの作品が賞を取るのかということと同じくらい、こちらも気になるところだ。
第93回アカデミー賞授賞式は、4月26日(月)午前8時30分よりWOWOWプライムにて生中継