磯村勇斗が語る徳川家茂と慶喜の微妙な関係 朝ドラに続き念願の大河
現在放送中の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほかにて放送)で、江戸幕府第14代将軍・徳川家茂(とくがわ・いえもち)を演じている磯村勇斗。2017年に放送された連続テレビ小説「ひよっこ」に出演後「大河ドラマにも挑戦したい」という思いを抱いていた磯村が、念願の大河出演が叶った心境を語った。
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日本資本主義の父と称された実業家・渋沢栄一(吉沢亮)の生涯を描く本作。磯村演じる徳川家茂は、動乱の幕末期の将軍家督争いに巻き込まれ、わずか13歳で征夷大将軍に。若年であったため、のちの第15代将軍となる一橋慶喜(徳川慶喜/草なぎ剛)が事実上の実権を握る将軍後見職につくなど、いびつな権力の構図に翻弄された一面も持つ。
磯村は「13歳で将軍になり、21歳でこの世を去ってしまう人物。時代に翻弄され流されてしまう部分がありつつも、一生懸命幕末の時代を背負って頑張った人。人への心遣いができ、どんな人にでも威張らず寄り添える心の豊かな将軍を演じられたら」と役へのアプローチ方法を述べる。
近年はドラマ&映画「今日から俺は!!」のヤンキー高校生役や「きのう何食べた?」の人気キャラクター、ジルベール役などで注目を浴び、現在「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京系)が放送中。ドラマや映画に引っ張りだこだ。「朝ドラに出演したとき、次は大河ドラマにも挑戦したいと思っていたので、お話をいただいたときは嬉しかった」と笑顔を見せると「カツラをつけるにしても、すごく時間をかけて準備してくださいますし、セットもリアル。自然とお芝居に集中できる環境を作っていただけているので、とても素敵な時間を過ごしています」と充実感をにじませる。
時代劇の所作など初めての経験も多く、最初は「自分にできるのか」と不安に思っていたというが、クランクイン前には将軍としての立ち振る舞いや、姿勢、歩き方など、しっかりと指導を受けて撮影に臨んだ。それでも「やっぱり所作は難しいです。どうしても所作=制限と考えてしまうので」と苦戦するが「一番大切なのは家茂の感情」だという。
家茂と言えば、朝廷と幕府の関係悪化による、幕府の権威失墜を回避するために、孝明天皇(尾上右近)の妹宮である和宮(深川麻衣)と結婚したことが大きなトピックスとしてあげられる。磯村も家茂について「政略結婚という形ですが、和宮さまを一途に愛した人。苦しい状況の家茂が頑張れたのは、和宮さまが心の支えになってくれたおかげだと思います」と語ると「和宮さまと家茂の二人きりのシーンは、とても温かな時間が流れていたなと感じました。ぜひ注目してほしいです」と期待をあおる。
また、一橋慶喜との関係も見どころの一つだ。「家茂は自分が若くて何もできないことは分かっている。そのなかで慶喜には助けてもらっているという感謝はあるのですが、一方で全部いいところを慶喜に持っていかれてしまう悔しさもある。複雑な感情をしっかり表現していきたいです」
そんな微妙な関係にある慶喜との対峙について「草なぎさんは、独特の緊張感があります」と率直な感想を述べると「現場では慶喜として生きていると感じたので、あいさつ以外の会話はしませんでしたが、その姿があまりにも自然で、醸し出す空気感がとても素敵だなと感じていました」と撮影を振り返っていた。
「これまで自分が通ってきた道とは違うスキルが要求される時代劇。まだまだ未熟な部分が多いので頑張りたいです」と語った磯村。それでも「所作など勉強すればするほど、身体に沁みついていく感覚があり、一つずつ武器が増えていくのは実感できています」と大河での経験が着実に血肉となっているよう。
さらに磯村は「朝ドラに大河ドラマと、ある意味で二大巨頭のような作品に参加させてもらえたことは、僕の俳優人生にしっかりと刻まれていると思います」と感無量な表情で語っていた。(取材・文:磯部正和)