柴咲コウ、クルエラ役を通して蘇った20年前の自分
ディズニー屈指のヴィランの誕生秘話を描いた映画『クルエラ』で、主人公・クルエラの日本版声優を務めた柴咲コウが、アフレコ収録や役を通して蘇ったという「20年前の自分」について語った。
ディズニー・アニメーション『101匹わんちゃん』などに登場するクルエラは、私利私欲のためなら手段を選ばない非情な悪役。犬の毛皮を使った特製コートを作ろうと、部下のホーレス&ジャスパーと共にダルメシアンの子犬の誘拐を計画した。最新作『クルエラ』では、ファッション・デザイナーに憧れる少女エステラ(エマ・ストーン)が、狂気に満ちたヴィラン“クルエラ”へと変貌していく過程が語られる。
オーディションを経て日本版声優に抜てきされた柴咲は、「『101匹わんちゃん』やクルエラはもちろん知っていたのですが、今回はどうやってクルエラが誕生したのかという内容で、アニメーションとは全然違います」と切り出すと、「日本版声優に決定して、改めて全編通して私がどんなキャラクターに声を吹き込むのか観た時に、一つの作品として純粋に面白かったです」とコメント。才能に満ち溢れた一人の人間が、ある出来事をきっかけにヴィランへと変貌していくさまを活写する人間ドラマに魅了されたという。
アフレコ収録に臨むにあたり、「クルエラがすごく魅力的なキャラクターだったので、劇中そのままの感覚は大切にしようと思いました」という柴咲。悪女クルエラらしい笑い声は、「女優さんお芝居が大いに反映されていますし、そういった制約があるなかで、日本版としての声のバランスを探っていきました」とエマの演技を参考にしながら構築していった。また、クルエラとしての声を聞いてもらいたかったと話す柴咲は、収録した音声を一度通して確認し、気になった箇所を全て修正。「私という人間が透けて見えてしまうのが絶対に嫌だったので、客観的に自分の声を聞いて、私の声っぽいなと思う部分は再録していきました」と述懐した。
主人公・エステラは、ファッション・デザイナーとしての才能を評価されず、雑用仕事を繰り返すだけの毎日を送っている。声優決定時、20年前の自分を掘り起こすような感覚があったと語っていた柴咲は、「当時は、自己評価と他者の評価の折り合いがつかない、自分のやりたいことができずにフラストレーションが溜まっていくということが普通でした。そういう意味では、エステラのようにファッション・デザイナーになりたい、でも誰も目を付けずに評価もしてくれない、トイレ掃除ばっかりしている、という葛藤がすごく理解できました」と当時の自分とエステラの姿を重ねる。
「できないことに直面した時、『もっとできるようになりたい』という思いがエネルギーに変わったり、その繰り返しでした」と続ける柴咲。「撮影現場で怒号が飛び交うことが当たり前だったので、時には『帰れ!』と言われたりして……。悔しいと思いながら成長していきました。そういう風に言われなかったり、悔しさが芽生えたりしなかったら、ここまで(お仕事に)熱中していなかったかもしれません」。
社会に反骨精神と独創的なセンスで、ファッション業界でめきめきと頭角を現していくエステラ。柴咲は改めて、「『私にもこういう時代があった』で終わらすのではなくて、今こそ当時のような思いを持って生きていくべきだという、いいきっかけをもらえたなと思います」と振り返っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
映画『クルエラ』は劇場公開中、ディズニープラスプレミア アクセス公開中(※プレミア アクセスは追加支払いが必要)