ONE OK ROCK Taka、親友・佐藤健への思い
シリーズのフィナーレを飾る佐藤健主演のアクション大作『るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning』で、主題歌を担当した人気ロックバンド・ONE OK ROCK。2012年公開の第1作から全作にわたり楽曲を手がけてきた同バンドにとって、『るろうに剣心』とは、どのような存在なのか。ボーカルのTakaが、最終章の主題歌誕生秘話、親友・佐藤健への思いとともに、あふれんばかりの“るろ剣愛”を語った。
【動画】『るろうに剣心 最終章 The Beginning』本予告映像
2部作となる本作は、和月伸宏のコミックを主演の佐藤とともに大友啓史監督が実写映画化したシリーズの完結編。新田真剣佑が演じる最恐の敵・雪代縁との戦いを描く『るろうに剣心 最終章 The Final』(公開中)に続き、剣心の頬に刻まれた十字傷の謎に迫る『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が6月4日よりいよいよ公開される。『The Final』のために書き下ろしたロックナンバー「Renegades」が大きな反響を呼ぶ中、『The Beginning』では、ピアノ・ソロから始まる美しくも切ないバラード「Broken Heart of Gold」が、悲しい過去を背負いながら寡黙に生きる緋村剣心(佐藤)を優しくつつみこむ。
■ここまで映画に寄り添って書いた曲は初めて
ハリウッド映画に勝るとも劣らぬそのスケールの大きさに、「とにかく驚いた」と声を弾ませるTaka。「日本映画もついにここまで来たか! という感じですね。圧倒的なアクションで魅せる『The Final』と、エモーショナルなドラマが展開する『The Beginning』。どちらも大好きなんですが、特に『The Beginning』の日本人特有の“陰”なストーリー性にはすごく惹かれるんですよね。健が自分の人生と照らし合わせながら剣心を演じているその姿は本当に切ない」と言葉一つ一つに力がこもる。
その熱い思いからか、『The Beginning』の主題歌「Broken Heart of Gold」に関しては、観終わったあと、「すでに頭の中で(音楽が)鳴っていた」というTakaは、「ピアノのソロ演奏からはじまるバラード」をイメージしたそう。「パッとひらめいた自分の感覚を信じ、その世界観を追いかけて、メロディーにしました。歌詞に関しては『ここまで映画を意識して書いたことがない』というくらい、今回は映画に寄り添って書きましたね。本編では、剣心の左頬の十字傷の真相を描いていますが、『なぜ、この傷はできたのか』ということも歌詞に盛り込んでいるので、逆にこの映画以外はハマらない曲かもしれません」
一方、エド・シーランとの共作で話題となった『The Final』の主題歌「Renegades」は、「何かを変えたい」という剣心のひたむきな生き様を ONE OK ROCK の音楽的な方向性の中に落とし込んで制作したロック色の強いナンバー。「2020年の2月頃ですかね、彼のスタジオに招待していただいたんですが、アルバム制作も兼ねていたので、約1か月合宿をして、曲作りに専念しました。その間、エドもたびたびスタジオに遊びに来てくれたので、ノリで『1曲セッションしようよ』ということになって『The Final』の話をしたら、彼が『るろうに剣心』に反応し、いきなりギターを弾き始めて……。どうやらコミックのファンだったようで、そこから一気に作り上げていった感じですね」
■日本人の奥深い心情を世界に伝えたい
主題歌は、海外市場も視野に入れ、英語バージョンと日本語バージョンが制作された。日本独特のサムライの世界を英語の歌詞で表現することについてTakaは、「最初に、伝えたいことを日本語で書き出すんですが、外国人に“サムライ魂”を理解しろと言ってもやっぱり無理があるので、英語のリリッカーに頼んで、日本人の奥深い心情が伝わるよう、わかりやすい表現に変換してもらいました。あと、本作を“世界で戦える作品”としてすごくリスペクトしていて、できれば英語で勝負したいという思いがあったので、日本語バージョンもワンフレーズ以外はすべて英語で表現しました」と作詞の舞台裏を明かす。
ちなみに、その日本語バージョンだが、ほぼ英語で埋め尽くされた歌詞の中に、剣心の心情を捉えたひとしずくの日本語がキラリと光る。「この部分だけは和訳ではなく、オリジナルで書いた歌詞なんですね。曲の雰囲気を変えないように注意しながら、この作品で一番伝えたいことを日本語に託しました」と思いを語る。それにしても、シリーズ完結作である『るろうに剣心 最終章 The Beginning』というタイトル。奇しくも第1作で ONE OK ROCK が手がけた楽曲と同じタイトルというめぐり合わせも運命的だ。「当時、僕らにとっても新たな“はじまり”の曲だったので、そのタイトルを最終章に持ってきてくれた大友監督の愛を感じずにはいられません」
■佐藤健とはお互いの足りない部分を埋め合う仲
本シリーズで主演を務めた佐藤とは、プライベートでも仲がいい親友同士。出会いは2人が10代の頃にさかのぼる。「健がまだ、『仮面ライダー電王』をやっていた頃ですね。事務所が同じだったこともあるんですが、たまたま彼が ONE OK ROCK のファンで、ライブにも何度も来てくれて。しかも同年代で、お互いに目指す夢に向かってがんばっていた時期だったので、自然と仲良くなりました」。ただ、性格は真逆なのだとか。「僕はどちらかというと、感情的な部分を表に出すタイプ。健は冷静な人間で、僕にないものをたくさん持っている。だから、お互いがお互いに足りないところを埋め合っている感じですね」
『るろうに剣心』の話で盛り上がることも頻繁にあるそうだが、佐藤のストイックな姿勢にたびたび驚かされたというTaka。「とにかく健は、『るろうに剣心』シリーズにどっぷり入り込んで作っているので、作品全体を見渡しながら、いろんなことに思いをめぐらしている。視野の広さは健らしいなと思いますし、だからこそ、主演俳優としても一切の妥協を許さない。一度撮影を見に行ったことがあるんですが、現場はまさに命懸け。『アクションができない俳優なんて俳優じゃない!』と言わんばかりに自分で自分を追い込んでいる姿は凄まじかったですね。完成作品を観ると、彼の努力を知っているだけに、もう泣きそうになるんです」
■『るろうに剣心』がONE OK ROCKを成長させてくれた
『るろうに剣心』とともに歩んで10年。シリーズは最終章をもって完結を迎えるが、今、Takaの胸に去来するものとは? 「健との出会いもそうですが、『るろうに剣心』という作品には、すごく運命を感じている」と感慨深げに語りはじめる。「僕らのバンドを拾ってくれた方が、当時、SIAM SHADE というロックバンドを担当されていたんです。彼らはアニメ『るろうに剣心』のエンディングテーマに「1/3の純情な感情」が起用されたバンド。その次に僕たちの面倒を見ることになるんです。それによって健と同じ事務所に入り、親交を深めることになりました」
『るろうに剣心』、佐藤健、そしてONE OK ROCK ……次第に引き寄せられる運命の赤い糸。「僕らの音楽を通じて親友になった健が、なんと『るろうに剣心』の実写版で主演をやることになった。それだけでも驚きですよね。ものすごく運命を感じたんですが、その健が、『僕に主演をやらせていただけるのなら、主題歌は ONE OK ROCK で。それ以外は嫌です!』と言ってくれて……。そこまで言ってくれた健のためにも、僕らはもう死に物狂いで曲を作りました」
第1作の大ヒットで、佐藤は若手俳優のトップスターに、ONE OK ROCK は初の映画主題歌「The Beginning」をきっかけに若者のカリスマへと駆け上がっていく。「第1作、そして『るろうに剣心 京都大火編』(2014)、『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014)とシリーズを追うごとに映画もどんどん壮大になり、僕たちの音楽もどんどん壮大になっていきましたね。その影響力は凄まじいものがあったと思います。ライブをやっても、国内外で『るろうに剣心』ファンの方々がたくさん僕たちの音楽を聴きに来てくれますし。まさに最終章と同じタイトル『The Beginning』という曲から ONE OK ROCK の躍進が始まったと言えますね」
壮大なシリーズのフィナーレを飾る映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。まるで別れを憂うかのような ONE OK ROCK の美しくも切ないバラードが胸に染みわたる。(取材・文:坂田正樹)
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は6月4日より全国公開