吉永小百合「スクリーンから飛沫は飛びません」東京・大阪公開に感無量
女優の吉永小百合が1日、都内で行われた主演映画『いのちの停車場』(公開中)の舞台あいさつに登壇し、ようやく東京と大阪でも公開を迎え、本作が全国に広まったことに「とても幸せです」と充実した表情をのぞかせた。
『いのちの停車場』は、現役医師でもある南杏子の小説を原作に、在宅医療を行っている診療所に勤めることになった元救命救急医がさまざまな患者と向き合う姿を描いた物語。映画出演122本目の吉永は、まほろば診療所に勤務することになった医師・白石咲和子を演じている。
4月25日に発出された緊急事態宣言により、都内のほとんどの映画館は休業が余儀なくされたが、5月28日に緊急事態宣言の延長が決定したことで映画館に対する措置が緩和された。この日、人数制限が設けられたものの、上映後に多くの観客の盛大な拍手で迎えられた吉永は、「今日は東京の初日に来てくださいまして、本当にありがとうございます」と笑顔で感謝を伝えた。また、「スクリーンから飛沫は飛びません。お客様同士が話をすることもなくなっています」と館内の現状に触れつつ、役者を含めた映画関係者が「声をそろえて、何とか映画館を開場してほしいと声を上げました」とこれまでの思いも打ち明けた。そんな思いが届いたかのような現状に、吉永は重ねて、「今日、東京と大阪で初日を迎えました。とても幸せです」と晴れやかな表情を見せていた。
舞台あいさつには、共演の広瀬すず、田中泯、成島出監督も登壇。全国各地でプロモーション活動を行った一同だが、吉永は「心残りは、一度もすずちゃんと一緒にご飯を食べられなかったこと。仕事が終わって(ホテルに)帰ったら、お部屋でルームサービスというのがずっと続きましたので残念です」と吐露。広瀬も吉永と本作の舞台となった金沢を訪ねるも日帰りだったそうで、「ほかのキャストの方とも、お仕事以外で一緒に過ごす時間がなかったので……」とさみしい心情を語った。そんな広瀬に、吉永は「今度、いつかね」と約束。広瀬は「ぜひ!」と声を弾ませていた。
成島監督は、松坂桃李の出演シーンにおいて、昨年亡くなった製作総指揮の岡田裕介さんと対立したことを告白。咲和子を手伝う野呂聖二(松坂)が、小児がんを患う少女・萌(佐々木みゆ)を背負って海に入るシーンがあるのだが、当初は波打ち際でパシャパシャと遊ぶ程度を想定していたものの、岡田さんが「沖に行ってほしい」と言ったという。成島監督は、萌が酸素ボンベを使用するほど重病のため、沖まで行くのは「医療監修の先生も納得してくれません」と訴えるが、岡田さんは譲らない上に、「僕が子供の頃、遠泳大会で溺れそうになった妹を背負ってゴールまでたどり着いたんだ。だから、松坂桃李は沖へ行くんだ」と、成島監督いわく「理屈が通らない」話まで持ち出してきたのだとか。結局、岡田さんの意見を取り入れることになったのだが、成島監督は「泳ぐというダイナミックさがこの映画のすべて。医学的にはめちゃくちゃだけど、命が未来に向かう(イメージが作れた)」と満足そうに話していた。(錦怜那)