『るろ剣』辰巳役・北村一輝、求められたのは物語性!
ついに封切られた映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で、佐藤健ふんする人斬り抜刀斎時代の緋村剣心の前に立ちはだかる幕府直属の隠密組織「闇乃武」の首領・辰巳を演じた北村一輝。立場が違えば生き様も変わる時代、辰巳という役を生きた北村が感じたこととは……。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は、剣心が人斬りをやめ「不殺(ころさず)」の誓いを立てることなった、雪代巴(有村架純)とのエピソードを描いた人間物語。北村は「世の平安は徳川なくして成り立たない」という信念のもと、人斬りとして幕府要人を暗殺する剣心の命を狙う辰巳を演じた。
これまでの『るろうに剣心』シリーズを観ていた北村は「アクションがメインの作品」というイメージを持っていたという。実際、リハーサルを見学に行った際、激しいアクションシーンが展開されることに、身が引き締まる思いだったようで「僕も覚悟しなければ」と思ったというが、それ以上に北村に与えられた役割は“物語性”。
「どちらかというと辰巳のお芝居の部分をしっかり求められていると感じました。辰巳はある種、正論を言い、諭すような役柄。この映画の中で人間の業や、生き様みたいなものをしっかり表現することが大切だと思っていました」
とは言うものの、映画を観ればわかるが、剣心との対峙する場面は、かなりのアクションシーンが展開する。「実際現場に入ると、結構激しいアクションがありましてね」と北村は笑うと「やはりアクション監督の優秀さはとても感じました。多彩な発想で、いろいろなことをしっかり考えて、計算しながら作っていましたね」と脱帽した。
辰巳の持つ人間性については「あの時代は真剣で戦っていたように、いまよりも死を身近に感じている。もちろん剣心もそうですが、常に死と隣り合わせのなか生きているからこそ、自分が信じるものを貫き通す強さ、美学がより強くなる」と語ると、そうした精神面をしっかり意識することで、自然と辰巳の言葉の重さや、行動、佇まいなどが表現されるという。
シリーズすべてのメガホンを取っている大友啓史監督とは、2018年公開の映画『億男』でも撮影現場を共にした北村。「長回しで撮ることも含め、大友組はとても面白い。シリーズの最後……という部分で、ほかとは違うなにかがあるのかもしれませんが、個人的にはまたこうして声を掛けていただけたことが、素直に嬉しいですね」と笑顔を見せると、佐藤との芝居については「ほかの作品でもご一緒していますが、そのときとは明らかに違い、常に剣心としてその場にいるような……すごくストイックに作品と向き合っている印象を受けました」と撮影を振り返っていた。
ラストを飾る作品を観た際「まずは剣心がものすごく格好いいし、巴が美しい。本当に綺麗に撮っているなと感じました」と感想を述べると「『The Beginning』を観たあと、もう一度シリーズの最初から観ると、より剣心の心の奥底が感じられるような気がします。ループして観ると面白いと思う」と北村なりの視点を教授してくれた。
新型コロナウイルス感染拡大により、約1年公開が先延ばしになった『るろうに剣心 最終章』。今年公開後も、再度の緊急事態宣言が発出されるなど、困難は続いた。北村は「あまり大げさなことを言うのは得意ではありませんが」と苦笑いを浮かべていたが「でもやっぱり心に残りますね」とつぶやく。
続けて北村は「公開できない作品があるなか、こうして初日を迎えられると、映画はみんなの魂が宿った命あるものだと感じます。いろいろなことが起こり過ぎるいまですが、困難を乗り越えて公開できたのは、作品に力があるから。長くファンに愛される映画になってくれれば」と思いを語った。(取材・文:磯部正和)