田中絹代監督『月は上りぬ』カンヌ国際映画祭クラシック部門に選出!女性映画監督のパイオニア
第74回カンヌ国際映画祭
7月6日(現地時間)より開催される第74回カンヌ国際映画祭のクラシック部門(カンヌ・クラシックス)に1955年劇場公開の田中絹代監督作品『月は上りぬ』の4Kデジタル復元版が選出された。
「カンヌ・クラシックス」はカンヌ国際映画祭の一部門で、復元された過去の名作映画や、映画に関するドキュメンタリーの上映を目的として2004年に設立。日本映画としてはこれまで『乱』(黒澤明監督)、『雨月物語』(溝口健二監督)、『楢山節考』(今村昌平監督)、『東京物語』(小津安二郎監督)などの復元版が選出されてきた。
今回選ばれた『月は上りぬ』は日本を代表する女優である田中絹代が監督した6作品のうちの第2作。小津安二郎と齋藤良輔が共同脚本を担当し、晩秋の古都奈良を舞台に三姉妹の恋模様が描かれる。田中自身が出演しているほか、三姉妹の父役を笠智衆が務め、音楽を齋藤高順が手掛けるなど、小津組の常連といえるスタッフが演出に彩りを添えている。
田中は日本映画史上二人目の女性映画監督(一人目は坂根田鶴子)にして、女優として日本で初めて映画監督を務めた人物でもある。今からおよそ70年前、女性が映画監督を務めること自体が極めて異例だった当時の日本で、女優業の傍ら監督業、日本における女性映画監督のパイオニアとなった。今回の選出をきっかけに映画監督としての田中絹代への再注目が期待される。なお、同部門における日活作品の選出は今回が初めてとなる。
選出の理由については「『月は上りぬ』には、我々の大好きな日本映画のクラシック作品のエッセンスが凝縮されています。そして、画面からはこちらに訴えかけるものを感じました。人間の感情の機微や複雑さが、極めてシンプルな手法で、しかし独創的に、そして美しく繊細に包み込まれています。このように力強い映画と出会いながら、新たな観客が本作を再発見する場を提供しないというのは、我々にとって考えられないことでした。カンヌ・クラシックスはこの珠玉の名作を披露するのに相応しい場だと思います」とコメントが寄せられている。(編集部・大内啓輔)