コン・ユ&パク・ボゴムの魅力とは?『SEOBOK/ソボク』監督語る
韓国映画界を代表するスターのコン・ユと、青春スターのパク・ボゴム共演で描くSF超大作『SEOBOK/ソボク』(7月16日公開)を手掛けたイ・ヨンジュ監督。日本でも大ヒットした青春映画『建築学概論』から約9年ぶりにメガホンを取った本作にかけた思いや、撮影現場で見たコン・ユとパク・ポゴムの素顔について語った。
コン・ユ&パク・ボゴムが逃避行…映画『SEOBOK/ソボク』場面カット<11枚>
本作は、国家の極秘プロジェクトで誕生した人類初のクローン・ソボク(パク・ボゴム)と、人類の救いにも災いにもなるクローンを護衛することになった元情報局エージェント・ギホン(コン・ユ)の物語。前作『建築学概論』では家を建てる過程を、人を恋し愛していく過程になぞらえて初恋のときめきを描いた監督だったが、今回は一転してSFに挑んだ。
コロナ禍で公開が延期されるなどの事情もあったとはいえ、前作から約9年もの歳月がかかった理由をこう語る。「少し大げさなんですが、私はシナリオを書くとき、いつもこれは自分の本心なのかと問うんです。もしかしたら、こんなことを書きたいわけでもないのに書こうとしてないかと。それから、映画を撮るときもそうです。自分はこう撮りたいけれど、世間の多くの人はこう撮ったものの方が好きだろうということがあります。そういうときは自分と世間とで妥協点を探らなくてはいけない。なので、ものすごく悩むんです。それは私にとって戦争なんです。とくに、今回の『ソボク』ではかなり悩むことがあったので、余計に時間がかかってしまいました(笑)」
これまで韓国映画で扱われたことのない「クローン人間」という新鮮なキャラクターが描かれている本作。そのため、韓国では取材のたびに、過去のSF映画のあれに似ている、これを参考にしているのでは? と質問が飛び交った。だが、監督は「最初からSF映画だと思って作っていなかった」と明かす。
「そもそも私はジャンルに関心はなくて。この作品では、ギホンという男がソボクという存在に出会ったことで救われるという2人の男の関係性に重点を置いて書き進めていったんです。そのうち、ソボクのキャラクターを決めていくなかで、じゃあソボクがクローン人間ならどうだろう、もしも超能力を持っていたらどうだろう……とどんどんアイデアを膨らませていっただけなんです」。その結果、生まれて初めて実験室から外の世界に出たクローン人間と、死を目前に生涯最後の任務に就いたエージェント・ギホンが追っ手から逃げのびてゆくなかで、“死”と“永遠の命”に対峙する物語ができあがっていった。
メインキャストの起用についても、監督の強い思いがあった。ギホン役のコン・ユについては「私が『建築学概論』を撮り終えたころから関心を持ち、いつか一緒に映画を撮りたいと思ってました。彼は演技に安定感があって、そのシーンに漂っている空気までしっかりと自分でつかんで演技をしてくれる。ギホンというキャラクターの内面までを理解し、元情報局員としてのアクションシーンもこなす準備もしっかりとしている。とにかく責任感が強い。まさに模範となる俳優だなと思いました」と大絶賛。
一方、ソボク役のパク・ボゴムに関しては、「まだ若手で主演作も決して多くない。けれども、ソボクのイメージにぴったりでほかに代えがいないと思いました。実際、ソボクを演じる彼は外の世界に出てさまざまなものに初めて触れ、知る感覚を本能的に、また動物的に表現する。とくに眼差しの演技には素晴らしくて圧倒されました」とベタ褒めする。
また、近年、世界的に注目されている韓国エンタメ界。今回の主演2人はもちろんだが、前作『建築学概論』で起用された俳優たちは、映画やNetflixが配信するドラマによって海外でも人気を博している。たとえば、ヒロインの若き日を演じ、“国民の初恋”と称されたペ・スジは8月27日公開の『白頭山大噴火』ではメインキャストの一人を担い、主人公の学生時代を演じたイ・ジェフンはドラマ「シグナル」や「ムーブ・トゥー・ヘヴン~私は遺品整理士~」(Netflix)で活躍している。
監督は、「俳優たちの魅力だけではなく、彼らが出演している作品のシナリオや演出だったり、スタッフの力だったり。すべてのものがうまく相まって、彼らの魅力が引き出されたのだと思います。さらにいえば、映画の『パラサイト 半地下の家族』やNetflixドラマの『キングダム』のように韓国国内だけでなく、世界の人たちが面白いと思える作品をどんどん生産しているからこそ、成功しているのではないかと思います」と分析する。
最後に、監督に世界進出の可能性を聞いてみた。すると、即座に「私とは無縁です」ときっぱり。「私は世界に向けてとかグローバルに受け入れられる作品とか興味はないんです。自分が本心から書きたいものを書き、撮りたいものを撮る。世界に打って出る、なんて気持ちは全然ないですよ」と語っていた。(取材・文:前田かおり)