『ザ・スーサイド・スクワッド』ジェームズ・ガン監督、不器用なはみ出し者を愛する理由
DCコミックスの悪役チームの活躍を描く新作映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』でメガホンを取ったジェームズ・ガン監督が、マーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など、監督作に込めた、他者とうまくつながれない、はみ出し者たちへの愛について語った。
スーパーヒーローを苦しめた悪役たちが、チームとなって減刑をかけた命がけのミッションに挑む『ザ・スーサイド・スクワッド』。メンバーは、平和のためなら女子供も殺すピースメイカーや、極彩色の水玉を放ち人間を”チーズ”に変えてしまうポルカドットマンなど、アブない悪人だらけだが、ガン監督は「この映画の登場人物は、とんでもなく悲惨な人生を歩むなかで大きな過ちをおかしてきた、どうしようもない奴らばかり。他人とどう接していいのかわからず、まともな人間関係を築くことができないでいる。でも僕は、そんな心に傷を抱えた不器用な奴らに、何ともいえない愛着を感じるんだよね」と語る。
出世作となったマーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でも、ヒーローらしくない、銀河のはみだし者たちを主人公に据えたガン監督。『ザ・スーサイド・スクワッド』も、行き場のない者たちが擬似的な家族を形成する点は『ガーディアンズ~』と共通しているといい、そんな彼らに自分を重ねてしまうのだという。
「僕自身もそんな奴の一人だからね。かなりみじめで複雑な生い立ちのせいで、いまだに人付き合いが苦手で、他人とうまくつながれないでいる。修練を重ねたおかげで克服しつつあるけど。基本的に僕の映画は、そんな同朋たちに向けて作っているものだと言ってもいい。いくつもの大変な間違いを犯してきた、欠陥だらけで自分の居場所が見つけられない、どこにも属せない奴らに向けたね」
クレイジーでアブない「スーサイド・スクワッド」だが、ガン監督は、彼らと観客の距離は遠くないと感じているようだ。「コミックで例えるならば、僕たちみんなキャプテン・アメリカよりかはポルカドットマンに近いと思う。そもそも、完全無欠の人間なんていやしない。そうした、不器用ながらも他人とつながりを持とうと葛藤するキャラクターを核に据えた映画を作り続けてきたことで、“出来合いの家族”というテーマに自然と行き着いたんじゃないかな。彼らが少しずつ他人とのつながり方を覚えていく過程は、この映画の大きな魅力のひとつだと思ってるよ」
そんな思い入れのある本作について、製作・配給のワーナー・ブラザースは「DCコミックス原作でありつつ、まぎれもなくジェームズ・ガン監督作と言えるな映画になるよう、思う存分やっていいと一任してくれた」というガン監督。自由な映画作りを約束されたからこそ、「責任を感じていたし、巨額の予算を投じた大作だから、下手なリスクを冒すべきじゃないと肝に銘じていた」と明かす。
「リスクといってもキング・シャークが人間を真っ二つに引き裂くシーンを言ってるんじゃない。あれは確かにグロいけど、笑って許される範囲内だとわかっていたからリスクのうちにも入らない。僕がリスクと捉えていたのは、映画全体のバランスをどう取るのかってことだ。ストーリー全体の構成や進行ペース、キャラクターの意外な一面をどんな形でどの程度見せるか、ほっこりするようなシーンをどこにどのくらい入れ込むかといったね」
そのうえで「最高に笑えるお茶目でぶっ飛んだキャラクターがたくさん登場する一方で、リアルで骨太なところもある、過激でバイオレントなところもあれば胸に響くハートウォーミングな部分もあるといった具合に、様々な要素を詰め込んだ作品になっているはずだよ」と語るガン監督は、「何といっても、その中核を成すのは個性豊かで魅力的なキャラクターたちだけどね」と、はみ出し者たちの活躍に自信をのぞかせた。(編集部・入倉功一)
映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は8月13日より全国公開