日本中が平野紫耀に恋をする理由…!『かぐや様は告らせたい』続編レビュー
累計発行部数1,650万部を超える人気漫画を原作とし、平野紫耀×橋本環奈のタッグにて2019年9月に公開、大ヒットを記録した映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』。待望の続編にして完結編『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』が20日より公開中だ。(以下、ネタバレなし)
将来を期待されるエリートたちが通う私立秀知院学園の最高ランクに位置する生徒会。生徒会会長・白銀御行(平野)と副会長・四宮かぐや(橋本)は互いに惹かれ合いながらも、「自分から告白したら負け」という呪縛にとらわれ、素直に想いを伝えることができない。「いかにして相手に告白させるか」ーー2人は、その高すぎるプライドと低すぎる恋愛偏差値で、相変わらずの恋愛頭脳戦を繰り広げていた。
もちろん前作を鑑賞の上でファイナルに臨みたいところだが、初見でも充分に楽しめる作品だ。世界観が徹底しているため、すぐに理解し飛び込むことができる。ちりばめられたパロディや小ネタも楽しく、コメディーかと思えばシリアスに、シリアスかと思えばコメディーにと引き戻される、そのテンポがなんとも心地よい。「恋愛頭脳戦」という特性上、前作同様モノローグが多用されているが、平野、橋本ともにコミカルな表情とアフレコで、振り切った芝居を見せている。
今作では、生徒会メンバーの背景もフォーカスされ、前作よりも青春色が強い印象だ。一つひとつの事象を通し、白銀とかぐやの魅力が描かれる。ファンタジックな世界観にありながら、エピソードはいずれも、年齢問わず共感できるものであり、幅広い世代が楽しめる作品となっている。
作中で白銀は、何度か「男らしく」という言葉を口にする。なかには時代錯誤だと言う人もいるかもしれないが、白銀、そして平野には「男らしい」という形容詞がしっくりくる。説得力があるのだ。直近の出演作であるドラマ「未満警察 ミッドナイトランナー」(日本テレビ系)で演じた一ノ瀬次郎もまた「男らしさ」をまとっていた。強い心身と純粋さ、ほんの少しの陰を持つ、そういう役どころこそ平野の真骨頂だ。平野が演じるからこそ白銀は、コメディターンで少々情けない姿を見せようとも、かぐやが恋焦がれてならない存在として揺らぐことがなかった。なにより、心を決めた瞬間の平野の瞳は、つかまれば逸らせないほどに強い。スクリーン越しにも、その眼差しに射抜かれそうになる。
かぐやが白銀を好きな理由、かぐやが語るとおりの「白銀御行」を、平野はさまざまな顔、そして魅力的なその声で演じ分ける。優しい笑顔、不意に見せる真剣な横顔、動揺してあたふたと慌てる姿や、無条件に頼れるたくましい背中、まっすぐな言葉。書き連ねてみると、平野と白銀には遠からずな共通点があることに気付く。印象的だったのは、体育祭の夜に月を見上げて話すシーン。ロマンティックかつ身近なモチーフ、本作だからこそ活きるセリフが美しく、King & Prince が歌う主題歌「恋降る月夜に君想ふ」の歌詞も、脳裏をかすめる。今作を通し、日本中が平野紫耀に恋をする理由がまたひとつ、わかったような気がした。
一筋縄ではいかない天才たちの恋。タイトルには「恋愛頭脳戦」とあるが、決して難しい作品ではない。むしろ、ひととき難しいことを忘れてただ楽しむ、ただただハッピーになれる作品だ。前作から「ラブ」「コメディー」ともさらに質を高め、キャスト全員に見せ場と魅力がある。
笑顔やときめき、ピュアな心を忘れてしまいそうな時代だ。めいっぱいの笑いとピュアなときめきを思い出させてくれる本作は、今こそ求められるラブコメディーの役割をおおいに果たしている。(文・新亜希子)